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アイツノ正体 8
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皇の前で魔法を使うわけにはいかないし、
余計なことを聞かれると面倒なので月人は渾身のスマイルを浮かべたままじわじわと移動し
レジ台の横に置いてあった箒を手に取った。
「では僕は外を掃除してきます!
ゆっくりしていってくださいね!」
笑顔を浮かべてそういうと、どうもー、と女性は嬉しそうにした。
ムカムカしながらも月人はレジ台に手に持っていた本を置いた。
女性に背を向けた状態で、皇を凄まじい形相で睨む。
「虫ケラにしてはよく出来てたと思うぞ。
見つけんのに0.3秒もかかっちゃったし」
本を手に取りながら、小声で皇が呟いた。
「お前マジで殺すからな...背後には注意しろよ...」
月人は引きつった笑みを浮かべながら同じように呟く。
「あーうん。楽しみにしてるー」
間延びした返事に月人はその眼鏡を今すぐ粉々に砕きたい、などと思いながらも箒を手に店の外へと出る。
思わず言ってしまった為
掃除をせねばならなくなってしまった。
また主婦と話を始める皇を
箒を両手で握りしめてバレないようにこっそりと睨んでおいた。
クスクスと楽しそうに笑う二人。
月人はなぜだか妙な気持ちになって奥歯を噛み締めた。
人のことを虫ケラだなんだと呼んで
偉そうにしているくせに、
その横顔は、なんだか。
思わずぼけっと見つめてしまいそうになり慌てて
月人は背を向けた。
いやいや、既婚者とイチャコラ喋りおって!
不潔な!解せぬ!
月人はイライラしながら店先を神経質に
掃除し始めるのであった。
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