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嫉妬4
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もう梓月には表情は浮かばなかった。
ただ下方を向き押し黙っている。
「...はぁ、もういいよ。.......惠。おいで」
やがて面倒げに梓月が言った。
俺は肩を揺らすだけで、俯いた状態からは脱せない。
面倒そうな顔をして、俺だけを見ている梓月の顔が怖くて見られないから。
どうしようもなく怖い。この梓月は俺の知るあの頃の小さく弱い梓月と同一人物だ。しかし、人は成長する。こんなにも怖いものだったか...。
灰田を見る。強くまっすぐした瞳が俺を貫いた。しかし、同時にもうこの問題に灰田を巻き込むべきではないと思った。彼が俺のために動いてくれることを知ったから。この問題は俺が、俺たち2人が考えるべきことだ。
「...ごめん灰田。今日はありがとう。またな」
俺は灰田に別れの挨拶をした。
もう灰田に迷惑をかけるわけにはいかなかった。会ったばかりの俺を幾度となく助けてくれた。しかしだからもう巻き込めはしないのだ。
「めぐ......そいつと行くの...?」
「あぁ...ちゃんと話してみる」
「...」
灰田は何も言わなかったが、不安そうな目で俺を見た。
「...行こう」
俺は梓月が差し伸ばした手を取ることはないが、歩幅を合わせて歩いた。
立ち尽くす灰田が遠ざかる。
「僕の家に行くから。」
不意に隣を歩く梓月が声をかけてくるが、返事を返すことができない。怖い。俺は恐怖してる。きっと梓月が怖いのだろう。
昔だったらそう思うことはなかった。
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