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愛の巣に捨て犬参上
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<1>
スマホで確認したらまもなく昼・・・うっかり寝てしまった。そっとベッドを抜け出しカーテンを開けると外は春らしい爽やかな晴天。午前中特有の白い陽射しを見逃してしまった。窓を開けるとスーっと外気が入り込んでくる。暖かな陽気の感触・・・今日は20度を超えるだろう。
「・・・何時?」
後ろを振り向くとベッドの中から理がこちらを見ていた。
「まもなく昼になる。」
「どうりで腹が減るはずだ。」
ベッドまで戻り上掛けの上に横になった。
「なんだよ、入ってこないのか?」
「さすがにこれ以上寝ているわけにはいかないだろうな。」
「ああ・・・今日の夜だったっけ。面倒臭くなってきたな~仕事では絶対しないけど仮病作戦を発動させるか。」
「今回乗り切っても、結局違う日程を組まれるだけだ。それは俺達の定休日にしかならないから、同じことの繰り返しになる。」
「あ~~もう。休みなんだってば!週1回の貴重~~な休みなのに!」
「朝にこだわったのは理だぞ?」
「だって・・・休みの朝ってすごくいい気分だろ?おまけに春だし。色ボケするには絶好のタイミングだ。」
「理はもう少しここでグズグズしていればいい。そのあと風呂に入っってスッキリして普通に戻る。俺は掃除と洗濯、買い物を済ませておくよ。」
「優しいな。」
「負担は理の方が大きそうだからな。シーツを取り換えるからその時だけベッドからおりてくれるか?」
「シーツ・・・だよね。」
「あいつらが来た時シーツがぶら下がっているのは嫌だろ?天気もいいしベランダに干せば乾くだろう。」
ぶら下がったシーツを想像したのか理は顔をしかめた。そしてノソノソと起き上がる。白い肌に陽射しが当たって色が変わった瞬間、熱がぶり返しそうになる。
理は俺の腹をペチペチしたあと満足そうに微笑んだ。
「しょうがない。ベッドは諦めて掃除を頑張る衛をソファの上から眺めることにしようかな。」
「ああ、そうだな。」
理は俺の鼻をキュっと摘まんだ。
「『ああ、そうだな。』 って格好つけているけど、盛り上がりそうになっただろ。」
「・・・なんだよ。」
「太陽の光がいいよな。衛の肌を照らしている。ゾクっとした。」
ブチン
そんなことを言われて「掃除をしましょう。」なんて言えるか?
当然俺は理に襲い掛かった。
<2>
「五時過ぎたぞ?ちょっとはシャキっとしておかないと。」
理はソファにぐたりと横になったままテレビを眺めている。一斉に植物が芽吹くこの時期、生物は皆影響を受ける。俺も理も男・・・突き進む本能を止める理性は脆い。あっけなく本能に降参した結果、予定していた作業はかなり押してしまった。シーツはクローゼットの中に押し込んで明日朝早くに洗濯することにした。最低限の掃除をして買い物をすませて帰ると、理は服を来てソファに埋まっていた。もう少し活動的になってもらわないと。こんな顔をあいつらに見せる気はない。
「理?聞いてるか?」
「聞いているよ。本気で仮病する?」
「面倒なことはさっさとすませたほうがいい。」
「わかったよ、もう俺は酔っぱらったことにしよう。そうしよう。」
その方がまだマシだ。
「じゃあ用意をするよ。」
「衛サイコ~~俺はダメダメ~~」
普段なら甘える理に喜ぶ俺だが、この時ばかりはさっさと飲ませて酔わせようと決めた。
そして約束の時間>>
「お邪魔しま~~す。」
「お疲れです。」
捨て犬が二匹。かわいい仔犬なら頭を撫でるところだが、もう立派に成犬。
「へえ~ここがお二人の住まいですか。」
ビミョウすぎる発言に反応しないように聞き流す。お二人の住まい?わざと言ったわけじゃないだろうな、石川。
「武本さん、お久しぶりです。メッチャ寛いでますね。」
「渡辺、馬鹿じゃないの?ここ武本さんの家なんだから寛いでいてあたりまえだろう。」
とりあえず理の色ボケモードは寛ぎモードとして認知された。胸を撫でおろす。
「パスタでいいか?」
「何でもいいです!シェフの手料理ってプレミア感ありまくりですね。」
「だよな。明日自慢してやる。給湯室の女子がギャア~~って言うくらいに盛ってやるか。」
「それいい考えだな。渡辺と俺ダブルで二段攻撃!」
「おおお~明日が楽しみだな。」
理はニコニコしながら二人を眺めていた。懐かしい、変わっていない、そんなことを考えている顔。俺?二人の言葉を聞いて、北川は綺麗に話すんだなと、どうでもいい比較をしていた。
15分後>>
すでにビールは500缶が4つ空になっていた。早いところ酔っぱらってしまえばいい。あ~そういうことか、飲ませて潰せばいい。俄然俺のヤル気がアップ。
「パスタとつまみができたぞ。遠慮なく食べてくれ。」
「フライドポテトですね。」
「ハーブたっぷり、ニンニクも揚げたからホクホクだぞ。ただし明日の事を考えて食べる事。営業がニンニク臭いなんて最悪だからな。」
「こっちは枝豆ですか?」
「そう、枝豆。白いのはひよこ豆。赤いのはレッドキドニー。これをガーリックオイルで炒めた。」
渡辺と石川はさっそく皿に手を伸ばした。
「理は?食べるか?」
二人の箸を持つ手がビクンと止まった。何事かと二人を見るとビックリしたように俺を見詰めている。なんだ?どうした?
「どうした?あ、箸だと取りにくいか。トングとスプーンがあったほうがいいな。」
「あ・・いや。ああ・・・えと、お願いします。」
渡辺が挙動不審に陥ったままモゴモゴ言う。石川は理の方をじっと見ている。
「俺は豆のほうを少し食べようかな。だな、これスプーンがあったほうがいいよ。サーバー持ってきて。あ、衛、ついでにワインも。もうすぐ空くから。」
カチャン
石川が持っている箸を落として皿に跳ね返った。その音で初めて箸を落としたことに気が付いたのか、驚いたように転がる箸を見詰めている。
「なんだ、どうした二人とも。」
「あああ・・・ええと。」
「ええと?」
「飯塚さんと武本さん・・・ですよね。」
「誰に見えるって言うんだよ。」
「衛って・・・。」
「理って・・・。」
あ・・・・。
あ・・・・。
理をみると、俺と同様いつもの名まえ呼びが二人に衝撃を与えたことに気が付いたらしい。お互いの呼び方はずっと名前だったから、苗字で呼ばないと不自然になるという事に頭がいっていなかった。なんという初歩的なミス!!
「俺達の名前だけど?」
「いや・・・それくらいわかりますって。」
「知っています。でも・・・俺達だって石川と渡辺ですよ。」
「俺も会社いた時はそうだったけど、やっぱり職場の影響かな。」
「職場って、あの店ですか?」
「そう。俺スタッフの誰からも武本さんなんて呼ばれないし。」
「そう・・・ですか。」
「じゃあ、なんて?」
「サトル、理さん、理。かな。」
「ああ・・・そうですか。」
「へえ。」
「だから衛も理だし、俺も衛って呼んでいる。なんだよ、そんなビックリすることか?お前たちだって友達を下の名前で呼ぶ奴いるだろ?」
「いますね。」
「ですね。」
「忙しい時なんて飯塚!なんて言ってたら仕事にならないんだよ。マモリ!4番追加!サトル!8番のパスタ上がった!みたいなね。それを言ったらオーナーはミネだし、ホールはトアとハルだしね。そこでリーマン時代まんま、武本~飯塚~って逆に変だろ。」
「環境で変わるんですね。」
「なるほどですね。」
綱渡りすぎるだろう!二人がうまく誘導されてくれたからいいようなものの!(理の誘導トークが上手くいった、流石だ)
俺の呼び名に関してスッポリ抜けている。ミネ、ハル、トア、衛、理・・・確かに間違っていない。これを聞けば誰しも「衛」が俺の呼び名だと勝手に考える。でも俺は飯塚または飯塚さんだ。衛なんて呼ぶのは理だけ。
「ついでに言うと、俺課長のこと「充さん」って呼んでるぞ。」
「み・・・みつるぅ??」
「課長をですか!?」
「衛だって前と違うよな。」
「ああ、俺は「高村さん」だな。」
しょうがない乗っかってやるか。これが理のクロージング。名前呼びの不自然さはもう当たり前のこととして二人にインプットされただろう。
俺の「衛」より高村さんの「充」のほうが破壊力がある。現役の二人にとっては尚更。
「衛、サーバーとってこようぜ。俺はワイン選ぶ。」
『キッチンに移動』という理の伝達。俺達二人は並んでキッチンに向かった。サーバーを取り出すため引き出しをあけると、隣に理が立って引き出しの中のカトラリーをガチャガチャかき混ぜる。
「とりあえず、これで名前はクリア。俺達当たり前すぎる事をまたポロリするかもしれない。その時はどうにか切り抜けよう。取り繕っても意味はないので、さっきのように正直に言いつつも二人を誘導、わかった?」
「わかった。この相談が聞こえないようにグチャグチャにしてるのか?」
「そういうこと、あとで片付けるし。洗面所の蛇口をひねって音をだしつつ窓から逃げるみたいなね。」
「例えがトアすぎる。」
「大丈夫だ。何とかなる。・・・それに」
「それに?」
「いざとなったらバレてもいいよ、俺。あいつらなら理解できなかったとしても不用意にバラすことはしないと思う。」
「そうだな。」
「よし、じゃあ4人で楽しく飲むか。」
「さっさと潰してお開きにしよう。」
理は俺の耳元に唇を寄せて言った。
「賛成、がっつり飲ましてやろうぜ。先にいくからサーバーよろしく。」
ついでに頬にキスをしてキッチンを出て行った。
理の色ボケモードはまだ消えていないらしい。さらに気を引き締める。
二人を潰してやる。理の特別な顔を見せるつもりはない!!
なにごともモチベーションは大事。それに使命感が加われば鬼に金棒だ。
理の特別であるのは俺だけ。俺の特別も理だけ。
理を守るのは俺の役目。
だてに「衛」という名前をぶらさげているわけではない。
引き出しの中からサーバーを取り出し右手に握る。
捨て犬に餌をタップリやって眠らせてしまおう。
俺の本気をみせてやる!!
・・・・・・・・・・・・・・
葵衣 理一さんのリクエスト
「捨て犬が理たちの家を訪問したエピソード」です。
リーマン的会話と「武本に本命がいる」の件。これはまた別枠で書きたいと思います。
とりあえず、こんなのでよかったでしょうか?(よかったと言って~~ww)
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