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実はこんな名前だったのです
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ターコイズさんのリクエスト~~
ギイさんのお仕事です。サラリーマンのギイさんはどんな人?
こんな人になりましたww
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<1>
「ようやく今終わりました。まだ事務所ですか?」
イベントの搬出を終えて、会場を出た直後に電話をしているのは、俺の上司。この人は掴みどころがなくて不思議な人だ。
「あちらは搬出の応援が少なかったので、手伝いをしてきました。・・・・ええ、部長にははぐらかされましたけど、コンベンションセンターに探りをいれました。来年の同時期、この会場仮押さえをしています。」
え?それは本当だろうか。俺の問いかけにフュージョンの担当者は「どうっすかね、社内で検討しないと何とも。」と言った。それを多田さんに報告したら「わかった。」の一言。で?担当者の上の部長に当たってはぐらかされて、コンベンションセンターに直接?
・・・俺はまだまだすぎる、恥ずかしい。
「スペースですか?それが同じなんですよ。集客のデータは今週中にまとまるらしいので、フュージョンのペイラインや購入層の分析をして、来年乗るかどうか考えたいところですね。正直最終日の今日、去年よりも落ちているような感じがしますし・・・ええ、まあ・・・そうでしょうね。」
カバンから手帳を取り出し週明けの日付にメモ書きをする。
「集客と購入層のデータをフュージョンに依頼」
スマホにメモするのは構わないが手帳にも必ず書くように、そう多田さんに教わった。打ち込むのと書くのでは記憶に残る強さが違う。スマホにメモすればアラートが鳴るから安心して覚えようとしない。でも仕事は全部繋がっているから、過程を把握していないと後手後手になる。
「あれ?そういえば。メモに書いたな。」それで思い出したことも多い。結果を得るための下準備や下調べは欠かせない、これも嫌というほど実感した。先方の集客と購入者のデーターを貰う、で?次に何をする?去年のデータと比較する。だからそれまでに過去データを揃えて自分なりの分析をしておかないと、貰ったデータはただの数字だ。
アラートに従って「データください。」と依頼し、もらったデータを「届きました!」と多田さんに渡す。どうなる?ファイルで頭をパコーンだ。
何度パコーンをくらったことか。でも手帳にメモするようになってから、多田さんの言うことが少しずつ理解できるようになった。面倒見がいいとはいえない・・・でも放置とも違う。それが多田さんだ。
「まあ。同じようなパターンと企画で3年目でしょ?当然そうなるでしょうけどね。まあ来年も押さえたわけだから、何かしら好材料があるのかもしれないし。とにかく詳しいことは戻ってからですね。はい、わかりました。お疲れ様です。」
多田さんは電話を切った。足元にある荷物をウンザリした顔で見ている。ええ、わかります。結構な量ですよね。
「直帰と言いたい所だが、これ持ち帰らないとな。」
「ですね。」
「東札幌の駅までが遠いよな。」
「東札幌自体が微妙に遠くないですか?」
「まあ・・な。じゃあ行くか。」
荷物を分担して持ち、俺達は地下鉄に向かった。とりあえず、この荷物を会社の床に下ろしてホっとしたい。なかなか近づいてくれない地下鉄駅。どこでもドアが欲しい・・・
<2>
「半面じゃなく、全面?」
「ですね。」
「勝算があるってことか。」
「うちの商品の売り上げは去年並みです。落ちていない、でも上がってもいない。アイテムの幅を増やしただけに結果が微妙すぎますね。」
「集客データを見ないと何とも言えないな。これに関しては来週までにデータをまとめておいてくれ。お疲れさん。」
課長はミーティングテーブルから立ち上がりオフィスに戻った。2週間のイベント開催中、俺と多田さんは事務所と会場を行ったり来たりしていた。それから解放されるだけでもありがたい。
「多田さん、コンベンションセンターからどうやって聞き出したんですか?」
「ああ、それか。フュージョンの社員がセンターの事務所に行く時必ずくっついていっただけだ。事務所に入らないまでも常に行動をともにしていれば、関係者だって思われるだろ?」
「まあ、そうですね。」
「それにイベント会場にいる時はフュージョンのネームホルダをぶら下げているし。関係者であることは間違いないから向こうも疑問を持たない。」
・・・そうだったのか。
「イベント会場の観察やフュージョンの担当者と話すことは無駄ではない。でもこっちは小さな会社だ。うちの持っている商材は国内で扱う会社が少ない。それだけが理由で入り込めた物販イベントだ。この機会にあちこち顔を突っ込むのは無駄にならないさ。」
何にもしてないようで、結構色々している、それが多田さん。
「フュージョンさんのイベントに参加しております。これだってこれから強みになる。だからできればこのイベントは継続してもらいたいが、いかんせんこっちに決定権がない。札幌はイマイチでも都内開催は継続するだろう。今回を足掛かりに都内開催にうちの商材をねじ込みたい、これが課長の思惑。」
「・・・成る程。」
「だから今回は二人体制だったんだぞ?おかげで通常業務が滞りまくりだ。明日から本気で仕事しないと。」
「普段は本気じゃない、そんなこと言わないでくださいよ。」
「言ったらどうする?」
そのニヤリって顔は同じ男として狡いと思う。いい時も悪い時も、楽しい時も気まずい時も、このニヤリで返事の代わりになる。多田さんのニヤリは威力があって、ちょっと色っぽい。
彼女がどんな人かしらないけれど、絶対このニヤリにやられた口だろう。男の俺が色っぽいと感じるくらいだ、女子には凄まじい効果を発揮するはず。
「多田さんは一生懸命なのか、適当なのかわからない時があります。でもポカはないから出来る男の分類なんでしょうね、なんかズルくないですか?色々。」
「ああ?なんで俺が狡いんだよ。これが俺だし、他にどうなれっていうんだ?俺は俺。お前はお前。」
「そうですけど・・・多田さん歳とったら高田純次系ですね、きっと。」
今度はニヤリが返ってこなかった。眉間にズボンと深い溝。皺を通り越して溝!
「それは褒めているのか?んなわけないな。」
「だって多田さん、多田儀ですよ?「タダタダシ」芸名みたいです。」
「だからフルネームで呼ぶなって言ってるだろうが。」
ふてくされた顔がちょっと可愛い。上司に対して失礼だけど、多田さんは最近とても表情が豊かになった。「好きなヤツとちゃんと向き合っているせいかな。」なんて堂々と言うあたりが多田さんだ。見た目だって悪くないし、色々男として狡い面がいっぱいあって、一緒に居れば退屈しないだろう。俺は仕事をしている多田さんすら把握しきれていないので、素の多田さんなんて手に負えない。そもそも俺は男なので、女の人がいいから・・・ええと何を考えているんだ俺は。
「タダタダシが嫌だったから知り合いは俺のこと誰もタダシなんて呼ばないぞ。」
「なんて呼ばれてるんですか?」
「ギイ・・・だな。」
「ギイ?ゲームの登場人物っぽいですね。剣士系かな。」
「ゲームはやらん。儀を加工しただけだ。」
「じゃあ儀って呼ぶのは家族くらいですか。」
「・・・いや、そうでもない。」
多田さんは誰かを思い浮かべたのかふわっと笑顔になった。ニヤリバージョンを知っているだけに、このフワリも狡いと思う。そして今思い浮かべているのは「向き合っている好きなヤツ」ですね。
「デレデレしないでください。」
「うるせえな!片付けて帰るぞ。明日から俺の本気を見せてやる。」
ニヤリ
くう!狡いぜ、タダタダシ!
デスクに向かいながら俺は心に決めた。ニヤリとフワリを習得してやる。掴みどころがないくせに仕事を落とさない男を目指そう。そして時々の本気を真似る。
「今度写真みせてくださいよ。」
「誰のだよ。」
「もちろん、多田さんの彼女ですよ。」
「もったいなくてお前なんぞに見せられるか、100年早い。」
「100年も生きていません。」
「そういうこと、お前がご対面出来る日は永遠にこないということだ。」
「独り占めは狡いですよ。」
パコーン
久しぶりに食らった・・・。写真を見せてくれるくらい、多田さんに認めてもらえる部下になる。そんな目標だって立派な目標だ。
まずはニヤリだな。
男のニヤリを繰り出せるように毎日鏡と睨めっこすることにしよう、ニヤリ。
「叩かれてニヤケてんじゃないぞ、お前まさかドMか?」
俺のニヤリ道は・・・まだまだ遠いようです。
おしまい!
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