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ハル対決・・・その行方は?
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yonさんからのリクエスト!
ミネと由樹の会話は想像できない。う~む、これは私も考えたことがなかった。
こんなエピソードになりました~~
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ずっと気になっていたんだけどさ、なんでミネまで「兄さん」なわけ?」
鏡の向こうから俺の顔を見ているのは、サトルのお兄様だ。イマイチ掴みどころがないし油断しているとグサっと攻撃されそうな雰囲気。こんな人をベタ惚れ状態にした紗江さんは流石。サトル姉は弟以上の器っぽい。
「手助け・・・ですかね。」
「何のだよ。」
「飯塚の。」
「衛の?わかんないね、イマイチ。」
「お兄さんと紗江さんには飯塚も普通に接しているけど、ご両親には遠慮があるみたいで。」
「あ~まあ、それはしょうがないかな。」
「だから、俺も「兄さん」って言えば、飯塚も呼びやすいだろうなっていう・・・フォローです。」
更にジーっと見つめられて居心地が悪い。ハルにジーっとされるのは大歓迎だけど、如何せん相手がこの方だと何を言われるのか怖い。
「成程ね。」
「ええ・・・と?」
「ちゃんとしているんだなって意味。」
今まで俺に対する認識ってチャランポラン系だったってことかな。軽めに見えるのは今に始まったことではないし、わかってくれる人がいればいい。第一印象ってあてにならないからね。
「それと、よく思いきったな。」
「ハルのことですか?」
ニヤリ顔に対抗してニッコリしてみた。俺が思いきった事といえば、ハルのことしかない。きっとハルは話をしていたんだろう。聞かれたら俺だってあっさりゲロっていたはず。
「普通にノンケだっただろ?」
「だったんですけどね~」
キレイに動く指は毎度目にしても見惚れてしまう。絶対失敗ヘアーになんてしないだろうという確信と安心感。札幌でも田舎でも客が付くのは当たり前。
商売をする上で「立地条件が悪い」これが客足に影響するのは否めない。でもそれが100%店じまいの理由にはならないと思っている。中心部や交通の便がいい場所以外でも繁盛店はある。店が魅力的で、時間を惜しまず足を運ぶ理由があれば人は来るからだ。そう考えるとまだまだやることはある、そして出来ることも。
「お、真面目に考えている?」
「えと、店のことです。」
「ハルのことじゃなくて?」
またもやニヤリ顔(キシシ風味が添加)だから俺もニッコリを返す。
「店のことを考えるってことは、必然的にハルが含まれます。」
「おおお~~言うね、そういうの好き。」
好き・・・ですか・・・ちょっと照れるな。
「相手が男でも女でも、紗江以外は違ったんだよ。」
「は?」
そこには一世一代の告白をしましたなんて顔はない。当たり前にさらりと言ってのけた。アナタ何者ですか!
「サトから聞いていない?」
「サトルはそういうこと不用意に言いませんよ、絶対。」
「そっか・・・前髪切るよ。」
目をつぶり考えてみる。さて、こんな話をするのはどういう意図?ハルとのことなのか、サトルと飯塚のことなのか・・・もしくは両方か。
「前髪あげるか・・・額が綺麗だし。仕事中ハラリっとなったらそれはそれでポイント高い。」
「邪魔にならなければいいです。手入れが大変だとキープできないですよ、俺。」
「そんな難しいのはしないよ、一応ハルにも教えておくか。ミネが自分でできないときハルがフォローできるように。」
「あと一つ要望があります。」
「ん~なに?」
「ハルの髪をあまり短くしないで欲しいかな。俺の癒しなんです、ワシャワシャするのが。」
「ぶっ!」
笑うことないじゃないですか。あれが無くなったら俺は泣いちゃう。ワシャワシャは俺達の大事なコミュニケーションだし、俺の気持ちを落ち着かせる最高のアイテムだ。ワシャワシャされ放題のハルは可愛いし、それを見るのも楽しみの一つ。それがスッキリ丸刈ータになんてされたら・・・悲しすぎる。
「じゃれてるミネを想像して笑ったわけじゃないよ。ハルの短髪は・・・絶対ないな。イメージしたら笑える絵しかでてこなかった。」
「それを聞いて安心しました。」
「髪落とすよ。」
顔にブラシが当たる感触。くっついた髪の毛を落としてくれているらしい。ガーゼでピンピンするんじゃなくて、フェイスブラシで優しくなのが細やか。同じサービス業として色々参考になることが多いな。
「はい、落ちた。」
目を開けると、さっきとまったく違う雰囲気の俺の顔があった。
「上げるって言ってもオールバック系じゃないから。下ろしてもいいし、上げ気味にしてもいい。ワックスでグシャっとしてもいい。万能タイプにしておけばバリエーションが付きやすいし。「この間と雰囲気違う~」って喜ばせることができるだろ?」
「お客さん、そんなところまで見ていますかね。」
「当たり前だろ?特に女性の目は厳しいぞ。逆を言えば、いつも違う顔を見せているというのは興味を持つことに繋がる。客商売だからね、そういうのも十分サービスなんだよ。」
家族といる時の自然な笑顔、仕事をしている時の真剣な顔。ちょっと意地悪なニヤリと柔らかい微笑み。相当バリエーションを持っているお兄様だ。それを全て向けられている紗江さんは、相当愛されていると思う。
「ハルとは問題ない?」
「問題なんてありません。あ~ただ俺の両親に申し訳ないっていう思いが強いかな。帰国はまだ先だろうけど、その時がきたらひと悶着はありそうですね。」
「それは避けられないだろうな。紗江は全て知っていたから説明する必要もなかったし。両親に打ち明けることを考えたけど、果たしてそれがいいことなのか考えてって紗江に言われてね。言わないことにした。サトも同じことで悩んで・・・サトも言わないことにした。その辺りは衛のフォローが大きかったと思う。近い将来なのか、まだ先なのかわからないけどさ、その問題は頑張って乗り越えてくれないかな。」
「それはどういう意味ですか?」
「サトの・・・為かな。身近な人で自分と同じ恋愛環境にいるカップルが困難を乗り越えられない、それを目の当たりにすると相当不安になると思う・・・サトが。」
「サトルがですか?そんなんでブレたりしないでしょ?」
「衛はブレないだろうけど、サトはブレブレになるな。それが心配。」
サトルが?仮に俺とハルがうまくいかなくなったとしたら・・・まずは俺達双方の話を聞くだろう。色々心を砕いて寄り添ってくれるはず、もちろん飯塚も。店の運営に関わる問題になるから、そっちのことも考えつつサトルは動く。だからといって自分の恋愛まで壊れるかもしれないという不安に陥るだろうか。
「割とね、悩むコなのよ。」
「サトルが?」
「そういうこと。衛が頑張るだろうけど。」
「猛烈に頑張りますよ、きっと。」
「取り越し苦労かもしれない、でもやっぱり心配なんだよ。世間に披露できない関係を継続していくってことがどういうことかってね。フラフラしていたのに結婚して子供がいる自分と比べちゃうとさ・・・あんなに真面目に前に進んでいるのに、誇るべき関係なのに、そのせいで悩むことになるなんて不公平だ。」
人に言えない関係。男女の間でも隠さなければいけない関係は存在する。ただ同性同士の恋愛は拒否反応や嫌悪感のレベルが違う。少しずつ開かれて声をあげる人達も増えてきた。認知されつつあるし、新たなシステムを導入した企業や行政もある。
あったとしてもだ・・・問題は解決しない。現に自分の両親に打ち明けることを考えると正直怖い。でも避けては通れないのだ、ハルと一緒にいようとすればする程、避けることはできない。
「色々なことがハルと一緒じゃないとダメなんですよ、俺。」
「ん・・・わかる。紗江の代わりはいないよ、これからもずっとね。」
「だから、失わないために頑張るでしょうね。ハルに手伝ってもらって乗り越えます。サトルも飯塚も応援してくれるはず。もちろん、トアと坂口さんも。兄さんの不安を今の俺では解消できない。でも「心配無用だったな。」そう言える日を迎えられるように最善を尽くします。」
「・・・格好いいな、ミネ。」
「それに・・・俺がウダウダ悩んでいた時に飯塚が言ったんですよ「何があっても俺は味方だ。」って。あの男前顔ですよ?反則すぎて泣きそうになりました。だからサトルと飯塚が思い悩むような事にはしません。友人として仲間としての気持ちだけではなく、俺はオーナーですから。あの店が傾くような事は許せません、それが自分の事なら尚更。
今はこれくらいしか言えないですが・・・すいません。」
兄さんはシザーケースに鋏をポンと入れた後、俺を後ろから抱きしめた。フワリとしているくせにやけにしっかりと。
「髪が付きますって!」
「そんなことはいいんだ。サトや皆を近くで支えてやってくれ。」
「おあいこです。俺も支えてもらっています。」
「・・・安心した。」
「・・・ようやく兄さんと素直に呼べそうです。」
「兄さん呼び、認めてやるよ。」
そして頬っぺたにチューをされた!「ハルにもしたことあるから、ミネにしないのは変だろ?」と言いながらのニヤリ・・・やはりこの人はタダ者ではない。
ちょっと!あなたハルにチューしたってこと?
「もう一つ要望があります。」
「なに?髪の色?」
「ハル呼びは俺だけにしたいのですが。」
「ブワッハッハッハ!」
「なんで笑うんですか!」
「紗江だってハル君だぞ。坂口さんもハル君。眼鏡君はハルさん。店だって「ハルのおすすめ」じゃないか。客もハル君やハルちゃん。どういう対抗意識かしらないけど、ハル呼びするヤツを全員潰していく作業は骨だと思うよ?ミネがマサハル呼びすればいいじゃないか。」
「それは・・・北川家とサトルがそう呼びます!」
「んじゃ、北川。」
「・・・それは飯塚が。」
「名前の呼び方なんてどうだっていいんだよ。ハルにとって大事なのは、自分の好きなミネさんが「ハル」って呼ぶことだ。だろ?」
・・・ですね・・・ちっさいな!俺!
少し俺と同じ匂いがするなんて思っていたけれど、全然違った。何枚も上過ぎて敵わない。
潔く白旗あげますよ。
これからもよろしくお願いします、お兄様!
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