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いつもの朝だった。
極めて普通の、いつも通りの。
朝7時50分の電車に乗って20分、10分歩いて学校の校門に到着。
靴箱を開けて上靴を履き、2年3組の教室へ向かう。
クラスの扉を開けて、自分の席へ。
少年の席は一番奥の列の一番後ろ。
そこに腰かけ、今日は昨日忘れていた英語の宿題をする。
はずだった。
ない。
なかった。
少年のあるべき場所、クラスにおいての少年の唯一の場所。
透明になったのではと思わせる異様な空間だけがそこにあった。
少年の背中に、指に、脳に電流が走った。
どうして?誰が?どうして?
少年は力なくその空間に歩み寄った。
クラスメイトの視線が痛い。
自分に注がれているのだと思うと吐き気がした。
めまいがした。
いやだ、見ないでくれ、頼むから、僕を見ないで
少年の手が震える。
ひっそりと、誰にも注目されず、空気のように生きてきた少年にとって、人の視線は恐怖の対象でしかなかった。
少年は自分の居場所にたどり着いた。昨日までそこにあった自分の居場所に。
クスクスクス
笑い声がした。
少年の背中が訳も分からぬ汗で濡れる。
心臓がキュッとつかまれる。
笑い声のする方にゆっくりと振り向いた。
宮崎麗華(みやざき れいか)だ。
宮崎麗華、夏目宏行(なつめ ひろゆき)の彼女。
少年が最も苦手とする分類に属する女だ。
カーストのトップともいえる夏目に媚びて、それを盾に好き放題している。
私は王女よと言わんばかりに。
王女の横で子分が笑っている山岳圭吾(さんがく けいご)。
夏目の後ろにいつも引っ付いてる。江戸時代の商人ですとでもいいたげなそのニタついた顔は、少年をいつも不愉快にさせる。
普段なら関わりのない、関わるはずのないこの2人。
「あんた、昨日なにしたかわかってんの?」
醜くゆがんだ、しかし、どこか子供じみた麗華の表情が少年には般若に映った。
「壊したでしょ!私のピアス!」
少年の目は動揺していた。
しかし思い当たる節がないわけではなかった。
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