アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
7※
-
「せっかく麗華が気を利かせたんだ、ちゃんと食わないとな。」
狂ってる。
目の前に差し出された手に郁也は恐る恐る視線を移す。
米が潰れて粘ついており、グリンピースやニンジンがそれに交じって潰れ、床に落ちていた消しカスや小さなごみが混ざって、なんともいえないグロテスクなものになっていた。
これを食べろって?正気なの?
「ほ、ほら食えよ!」
突然後ろから頭を宏行の手に押し付けられた。
圭吾が動揺しながらも何かこの行為に参加したいという思いを胸に起こした行動だった。
宏行の大きな手に郁也の小さな顔がすっぽり収まる。
頬に鼻にベタベタした米が付着する感覚。
きもちわるい、
顔をあげようと抵抗すると圭吾の抑えつける手に力が入り余計にベタつく。
いつ終わるんだろう。
ぼんやりそんなことを考えていた次の瞬間。
前髪をガッと掴まれた。
必然的に顔が上がり、宏行と目があう。
ガチッと目があう。
とても綺麗な漆黒の黒の瞳。
その真っ黒の瞳の奥に何か暗い、孤独のような色を何か楽しんでいるようなそんな色を隠してた。
「こっちみて食べろよ。食べさせてやってるのは俺だろ?」
薄く形のいい唇から言葉が溢れる。
郁也は泣きそうになっていた。
しかし涙はこぼさなかった。
泣いてたまるか。
人はおかしなもので、こうして追い詰められ切った状況に立たされると反抗的になるらしい。
涙をこぼさないこと。それは郁也にとって、自尊心を保つ、抵抗する、唯一の方法だと思った。
睨みつけてやろうと思って目を合わすが、宏行の瞳はあまりに黒く、深いものだった。
このまま見つめていたらきっと吸い込まれてしまう。
そんなはずはない。だが郁也は本気でそうおもった。
目をパッと逸らす。
「こっちみろって。」
掴まれた前髪がこれでもかというほど、さらに引っ張られる。
痛みに思わず顔をしかめる。
すると宏行の口角がニッと上がった。
「はよたべろー。」
軽い口調なのにどこか冷たい。
急かすように宏行の手が郁也の顔をさすり、もはやごはんとは言えない潰れた何かが顔に擦り付けられる。
悔しい、辛い、苦しい、恐い
すべての負の感情が一斉に郁也を襲った。
ゆっくりと口を開けて、大きな塊を舌先でつついて口に運ぶ最悪の味であった。
なんと形容したらよいかわからない。
食感はにちゃにちゃしており、時折ゴリッと何か固いものが歯とぶつかった。
「うっわ、まじで食べてるよこいつ」
面白がるような圭吾の声が聞こえた。
しかし郁也の目に映るのは宏行だけだった。
あの吸い込まれそうな漆黒の瞳を見ながら、手の中のものを食べる。
時折舌が宏行の手に当たる。
その度に宏行は目を細める。
郁也はその中に愛のような、母性のようなものを見た。
ような気がした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
10 / 23