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8※
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地獄の昼休みがようやく去った。
あの後、一番見て見ぬふりをしそうな池田に発見され、事態は収拾された。
池田も内心宏行には怯えているのか、口頭のみの注意に終わった。
郁也の心臓は正直、張り裂けそうなくらいに痛かった。
5限は郁也が最も得意とする社会で、担当教師である佐々木も教え方が郁也にあっており、唯一楽しいと思える授業である。が、今はそうではない。
横に並んで座っている宏行が恐くて仕方ない。
いや、宏行よりも、クラスが恐いのかもしれない。
もともと友達が多いわけではない郁也であったが、軽い世間話はするといった程度にはクラスメイトともうまくやっていた。
それが壊れた。確実に。
先ほどからひそひそと郁也の耳に入る陰口。
「あいつ前から根暗だったしな。」
「正直きもいよね。」
中学生なんて長い物には巻かれよ精神なんだ。
僕だって、きっとそうしてたし、そうするよ。だからみんなは敵じゃない、恐くない恐くない、みんな強いやつにうわべだけ合わせてるんだ。
郁也は必死にいいきかせる。
一人は慣れていても、独りは怖かった。
結局社会の時間は何も頭に入ってこなかった。
それどころか、ノートすら満足に写せていない。
見せてもらえる友達もいないことに気づき郁也の心臓はまた圧迫される。
早退しようかな、もういたくない、ここにいたくない。
休み時間は以外にも何もなかった。
いや、ありはしたが、郁也自身に害は与えられなかった。
ただクラスメイトの陰口が聞こえてくるだけだった。
郁也は痛いほど視線を感じたが寝てるふりをしてごまかした。
俯き目を強くつむって呼吸に集中する。
そうするとクラスメイトの声がぼやけて反響し、言葉として認識されないような気がしたのだ。
実際、効果はなかった。
6限の数学の授業を終え、掃除をし、ショートホームルームが終わる頃には、郁也の精神はズタズタだった。
掃除のあと席があからさまに前の席と離されて置かれていたことにも傷ついたが、前の席の神木が郁也を盗み見て周りの男子と笑っていたのが何よりも傷ついた。
神木はフレンドリーな人柄で、いつも何かと郁也に話をしてくれる。
郁也にとって数少ない「話せる」クラスメイトだった。
そして郁也は悟った。
もうここは僕の敵だらけなんだ。
鼻がジンと熱くなって目に上がってくるのを耐え、終礼をして足早に教室を去った。
「明日ちゃんと来いよ」
通りすがった宏行の言葉が郁也の頭に反響した。
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