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「どーも。芹沢 奏多です(せりざわ かなた)。」
背の高いモデルのような青年は池田に手招かれ教卓に着くやいないや、気だるげに頭を下げ、自己紹介を始めた。
目にかかる髪はきれいな黄金色で顔立ちのせいもあってかハーフの印象を受ける。
たれ目気味の目じりに、長い睫毛に縁どられた瞳はどこか緑に輝いて見える。
嫌味にならない程度にニヤッと口角を上げるその甘い顔立ちにクラス男女問わず、息をのんだ。
それは郁也も例外でなかった。
「芹沢君は一週間前にこの街に引っ越してきたんだそうだ。不自由も多いことだろうから、助けてやってくれ。」
池田の言葉はこの時きっと誰の耳にも入っていなかったことだろう。
「よろしくどーぞ。」
ニコッと、まさにおとぎの国の王子様のような微笑みをもらす。
き、きれいな人だな...。
郁也もそう思わずにはいられなかった。
じっと奏多の目を見ていた郁也の瞳と奏多の緑がかった瞳が一瞬、カチッと合わさった。
郁也の心臓がドクッと波打ち、思わず目を下へそらす。
び、びっくりした。急に合うんだから...。
「あーそうだな、席は...。」
「あ、俺、あそこがいいです。」
池田がクラス全体を見渡して奏多の席を指定しようとしたその瞬間、奏多が指をさして指定し始めた。
その指のさす先。
クラスの一番端、窓際の、一番後ろの席。
まぎれもなく郁也を指していた。
うそ...。
郁也はあまりの衝撃に頭が真っ白になる。
ど、どどどうして?まさか、知り合い?そんなわけないよね、こんなにかっこいい人忘れるわけないし。
「小野寺の後ろか。まぁかまわんが...。」
教卓の横に置かれていたあまりの机と椅子を軽々と、器用に持って奏多は郁也の席に近づいてくる。
「ん?なんか臭くない?」
郁也の横を通り過ぎようとしたとき、奏多はなんの悪気もなさそうに言い放った。
郁也の身が反射的にビクつく。
自分はこの転校生にもきっといじめられるんだ。
上品な顔立ちのわりにどこか抜けている感じのある奏多はきっといじめる側に立つ人物だ。
「あぁー、なるほど。」
しばらく郁也の横に立ち止まり臭いを嗅いでいた奏多が納得したようにうなずく。
「君いじめられてんのね。」
郁也は思わず顔を上げてしまった。
まさかこんなにド直球に言ってくるとは思わなかったからだ。
なんて無神経な人なんだろう...!
人は見かけによらないとはこのことだ…。
郁也は怒りや恥ずかしさで顔を赤らめる。
すると奏多はわざわざ椅子と机をいったん置き、郁也の髪をなでた。
「おつ。」
優しくなでられながら、よくわからない若者言葉を使われ郁也はぽかんとした。
小悪魔のような甘い笑顔。
ただ、奏多の瞳が慈悲や哀れみに満ちていたのは確かだった。
クラスメイトもなにが起こったのか処理しきれていない様子の中、奏多は平然と机と椅子を郁也の席の後ろに置き、池田はなにやらいそいそと準備をしている。
郁也は後ろからの視線を感じながら、奏多という人物がどういった者なのか心のなかでまとめようとしたが、会ってたかが5分でわかることなど何もなく、それに加えて奏多の初対面の郁也に対する異様な対応に困惑する一方であった。
これからどうなるんだろう。
どこにでもいる平凡な転校生とはかけ離れた、イレギュラーな転校生の登場に郁也の不安は募る一方であった。
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