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「ねぇ、あんた名前は?」
一限が終わるや否や、奏多は郁也の髪を一房手に取り、指でくるくると絡め始めた。
当の郁也はその行動に何の意図があるのか探っていた。
「ねぇ、聞いてる?」
「あっ、う、うん。」
掬われた一束をクイッと引っ張られて郁也は反射的に振り向く。
「えっと、小野寺、郁也…です。」
人と話すのが大分久しく感じて変に緊張し、目を合わすことができない、そんな郁也に対して「ふぅん郁也ねぇ。」と言いながら奏多の細長で上品な、それであってどこか男らしい指が郁也の頬をなぞる。
本当に王子様みたいだ…。
近くで改めてみるとその美形さが目に眩しく感じる。
人の目を見て会話するのが苦手な郁也にとってはハードルの高すぎる相手だった。
「ねぇねぇ奏多くぅん」
猫なで声で郁也と奏多の間を割くようにして体を割り込ませてきたのは麗華だった。
予想はできていた。
奏多ほどの美形を面食いの麗華が放っておく訳なかったからだ。
麗華はすぐ隣に宏行がいることも忘れて夢中で奏多に話しかける。
女の子って怖いな…。
麗華の気に入って欲しいんですというオーラを郁也は冷めた気持ちで見ていた。
「おい、くせぇんだよ!」
郁也は突然の大声にビクッと肩を震わせ声のした方に振り返る。
圭吾だ。
机をガンッと乱暴に蹴られて郁也の腕や腹にあたる。
ジンジンと痛みが広がっていくのを感じながら郁也の手は震える。
また、またいじめられる。
今日はこれがおしまいじゃないの?
まだ何かあるの?
次の圭吾の言葉に怯えながら郁也は汚れて牛乳臭い机の隅を見つめる。
「早く拭けよなぁ!」
圭吾が隅に置いていた雑巾を拾って郁也に投げつける。
雑巾は郁也の頬に当たり、太ももに落ちた。
「なに?君がボスなの?」
郁也の後ろから声がする。
麗華が来てから麗華の声しか聞こえてこなかったので、その発言はとても目立った。
「ち、ちげぇし!てかボスってなんだよ、てか、お前その頭アウトだろ!」
圭吾も突然話しかけられて戸惑っているのか、声が上ずっていた。
奏多はふっと鼻で笑った。
「なんだ、雑魚ね。この髪は遺伝なの。許可も取ってるよ。ちょっと乱暴したけど。ってか、校則とか気にしちゃうタイプなんだね。かわい。」
「は、はぁ!?」
郁也は耳を疑った。
確かに圭吾は宏行に引っ付いてるだけの雑魚だが、それでも人をいじめるのに躊躇のない男で、少しはステータスもある。圭吾を怒らせると大抵何かの嫌がらせに合う、そのため一応クラスメイトは圭吾に対して気を遣う。
そんな圭吾に対してである。
転校生だから圭吾の扱いが見えていない可能性もあるが、にしても、初対面に雑魚はさすがに言えないだろう。
圭吾は助け舟を待つように宏行を見るが当の本人は隣の生徒と話している最中で、圭吾の期待を裏切る。
「こんなかわいい郁也に牛乳ひっかけるとか、」
郁也の心臓が跳ねた。
郁也の頭をポンポンと撫でながら奏多は言った。
もしかして、芹沢君は僕の味方かもしれない…?
光が見えた気がした。
圭吾にあんなことを言ってしまえる人だ、いじめを仲裁する勇気もあるかもしれない。
郁也の期待がどんどん大きくなる。
しかし、次の言葉に郁也はまた心臓を打たれる。
「やることが温いよねぇ。やるなら徹底しろよ。」
郁也の指先が痺れた。
その言葉に何の含みがあるのか、ガンガンする頭で考えているうちに二限開始のチャイムが鳴った。
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