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其の六
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しかしどれほど死にたいと願ったところで、懐剣さえ持たされぬ僕は、死ぬ自由すら持ち合わせてはいないのです。
いえ、本当に死のうと思えば舌を噛みちぎればよいのですから、僕には死ぬつもりなんてないのかもしれません。
しかし、その独り言の翌朝、枕もとに見慣れぬものが置いてありました。
「これは…、青もみじ、ですね」
窓から入ってきたのでしょうか?いいえ、閉め切っていたはず。
たった1枚、気付かなければ踏んでしまいそうな青もみじが1枚、枕もとに置いてあったのです。
四六時中、逃げ出さないように死なないように見張りのつけられているこの離れでは、誰かが、しかもたった一枚のもみじを置くなんて不可能なはず。
「…気にしないことにいたしましょう」
まぁ、もみじは好きですし。庭にも綺麗なもみじの木がありますが、これは一等綺麗な形だから、押し花にしておきましょう。
忘れないうちにと、寝間着のままなるべく重めの本をいくつも運ぶ僕を、侍女が悲鳴をあげて止めさせるのは二分後の話。
生まれてこのかた…もっと言えばこの数年、まともに運動をしたことがないこの身は、少し本を運んだだけで腕が痺れてしまうのですから考えものです。
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