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其の九
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ひとしきりどんなことを書こうか悩み抜いてから、いざ、と座り直して丁寧に文字をしたためてゆきます。
拝啓 青もみじの君
日毎暑くなって参りますが、お身体に障りはありませんか。この離れは風通しがよいものですから、夏は多少暑いくらいで助かります。
さてこの一年、夜毎の贈り物、大変感謝しております。
朝起きて、目を開ける瞬間、今日は何があるのだろうと楽しみにしているのです。
季節のものをいただけるおかげで、庭を見ずとも部屋の中にも風情が感じられるようになりました。
一年もの間、なんのお礼も申し上げず、申し訳ございません。差し支え無ければ、たまにでよいのです。
お返事がいただけたら幸いにございます。
敬具
そこまで書いて、悩みました。
先代、と書くのがよいでしょうか、それとも、今滝寺葵、と?僕などが、今滝寺を名乗るなど笑止千万。
そこまで考えて、僕には名乗る資格のある名もないのかと、愕然としましたが、決して顔には出さず、何も書かず手紙を終えました。
その晩、些か緊張しながら、枕元に手紙をおいて、眠りにつきました。
青もみじの君のお姿を見るまで起きて居たかったのですが…いつも部屋の香に誘われて、いつの間にか寝入ってしまうのです。
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