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其の什一
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それからまた、贈り物と手紙のやり取りで幾月が過ぎ、青もみじが紅くなり、散り、枝に白いものが積もるようになったある日。
「この5日、青もみじの君からお手紙がいただけないのは何故でしょう…」
幾度のやりとりの中で、彼がとてもお忙しい方だということと、ご身分とお名前さえ明かしてはいただけませんでしたが、なんと鷹仁様とお親しいということ、息子をご存知だということが判明したのです。
最初は少し、実は鷹仁様なんじゃないか…と期待した僕ですが、もちろん筆跡も、口調も、そんなわけはありませんでした。
でも、それでも久しぶりの人との関わりは楽しいもので。
それが鷹仁様のことをご存知の方ならなおさらのこと。
そこで僕はつい、鷹仁様はご多忙の中お身体を壊されていないか、息子の様子はどうなのか、当代のΩはどのような方なのか、尋いてしまいました。
鷹仁様はお元気である。御子息は最近よく悪戯をして叱られておられる。当代のΩはとても心優しい、御子息より2つ上の子である。などと、本当に手短にではございますが、教えてくださっただけで、満足していたはずなのです。
それでもやはり、僕は欲深いのです。
お手紙をいただけなくなったとき、僕は、息子の顔を見たくてたまらないと、うっかり漏らしてしまったのです。
きっと、こんな穢れたΩが次期跡取りを、しきたりを破ってまで一目見たいなど、欲深いと嫌われてしまったのでしょう。
「しきたりですから…仕方ないですから…」
我慢しましょう、と続けそうになった時、ある声が聞こえてきました。
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