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其の什四
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「…鷹仁さ、ま?」
カタン、という微かな音で目を覚ました葵は、部屋の違和感に気づく。
黒方の香…?
黒方は、鷹仁が昔から好んで衣類に焚き染めていた香で、この四年、一度も嗅いでいない香りだとしても、葵からしてみれば黒方とはそれ即ち鷹仁なのだ。
黒方を嗅いで鷹仁を想い浮かべないわけがない。
「何故、黒方が…」
ふと、額から落ちた濡れタオルを確認する。…冷たい。
枕もとの畳は…まだ温かい。
---っ!
「鷹仁さまっ!!」
先ほどまで息荒く寝込んでいたとは思えない早業で、葵は部屋を飛び出した。
部屋の前、離れの出入り口の見張りを振り切って、裸足のまま駆ける、駆ける、駆ける。
駆けて、何がしたいのか、どうしたいのか、わからない。それでも駆ける。ひたすらに。
「先代様!」
「お待ちください!先代様!!」
自分はこんなに速く走れたのか、と葵が自分で感心するほど速く、走った先に、見えた背中。
「鷹仁様ぁっ…!!!」
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