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其の什七
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「しきたりなんて、もう終わりだ」
「しきたりで、お前と一緒にいられない?」
「しきたりで、αの女を娶る?」
「しきたりで、お前に子も抱かせてやれない?」
「しきたりで、お前に顔を見せてはならない?」
「しきたり、しきたり、しきたり…!!」
「糞食らえだ!」
「そ、そんな…」
初めて見るくらい饒舌な鷹仁に、どうしたらいいかわからず混乱する葵。
それにも構わず、鷹仁は続ける。
「だから、もう、やめだ」
「しきたりが、などと言わせないようにした。
それだけの事を、俺は成し遂げた。もう俺の為すことに口を出す者はいない。
葵。俺の妻は唯一人お前だけだ。お前は俺の、俺はお前の運命の番だ。そして息子の朱雀も、お前を母と認識している。早く会いたがっていたぞ」
「そ、んな…こと…」
「本当は今夜、それを言うつもりだった。朱雀も連れて。だが今朝そう言ったら朱雀ははしゃいでこちらに来てしまうし、お前はそれで風邪をひくし…うまくいかなくてな」
「あ、申し訳…」
「ああ、気にするな。すぐに良くなる。そうしたら、三人で…いや、真白も連れて…、そうだな、梅も、桜も、ああ、青もみじも見に行こう」
「--青もみじ…」
覚えのある単語を繰り返すと、ハッとしたように鷹仁さまが慌てだした。
「あ、いや、その、やはりしきたりなんぞ…と言ったっておおっぴらにお前に会うことはできなかったし、そんな中でお前が死にたがっているなんて聞いて、その、お前は紅葉が好きだったな、と…時期ではないから青葉だったが…」
「あれは、やっぱり鷹仁様だったのですね」
「…手紙なんぞ、焦った。俺の筆跡ではバレるし、かと言って『青もみじの君』なんぞを装うものの、お前が、俺だとはいえ俺ではない奴に惚れてしまったら…と思うと、」
「鷹仁様」
顔を逸らした鷹仁様の頰に手を当てて、擦り寄る。
「この葵がお慕い申し上げているのは、生涯、鷹仁様ただお一人にございますよ」
「ああ…葵、愛している」
「ええ、葵も…愛しております。鷹仁様」
そのまま布団に雪崩れ込んだ僕たちが、「かあさまっ!!」と部屋に飛び込んでくる朱雀様に慌てるのは、翌朝の話。
此処に、愛ありて。-完-
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