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引っ越し-弐
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「母さまっ!!いらっしゃったのですね!!」
寝室を出てから鷹仁様に案内されて、朱雀様のお部屋をお邪魔した僕に、可愛い可愛い塊が飛びついてきました。
「お邪魔致します。朱雀様」
「母さま!じゃまなどと言わないでください!すざくは母さまがいらしてくださってとてもうれしいのです!」
「ふふ、ありがとうございます」
ああ、なんて幸せなのでしょう。
こんなに、触れられる距離で息子と話せるだなんて。
「…朱雀、いい加減離れなさい。母は父の妻だ」
「母さまはすざくの母さまですっ!」
「あ、あの…鷹仁様…子ども相手にそんな…」
「いや、こいつは一度言っておかないと駄目なタイプだ。
いいか朱雀。母と父は愛し合っている。そのお陰でお前が生まれた。お前が今この葵を母さまと呼べるのは父と母が愛し合っているからだ。よって父に母を独占する権利がある。わかるな」
な、なんという滅茶苦茶な理屈…
しかも子ども相手に愛し合っているなんて…照れます…。
などと僕が照れている間に、朱雀様も負けず反撃なさります。
「父さまと母さまがあいしあっているのはしっています。でも母さまはすざくもあいしてくださっています。すざくはそれもしっています。父さまと母さまがあいしあっているから父さまが母さまをどくせんできるなら、すざくも母さまをどくせんできます!」
「朱雀様っ!まだこんなにお小さいのに、なんて聡明なんでしょうっ!!鷹仁様!朱雀様は鷹仁様にそっくりであらせられますね!」
まだほんの5つだというのに、こんなに論理的にお話ができるなんて、流石α…鷹仁様の御子です。
感動している僕に、朱雀こそ滅茶苦茶な理屈で話しているだろう…と苦く呟いた鷹仁様。
「…葵、今話しているのはそういうことではなくてだな…」
「こんな御子が本当に僕の息子だなんて…幸せです」
「っふわぁっ!?母さま!?」
鷹仁様の苦い顔も目に入らず膝をついて朱雀様と同じ目線になった僕は、朱雀様をぎゅーっと抱きしめてしまいました。
「葵。抱きつく相手を間違っているぞ」
「ふふ、鷹仁様もいらっしゃいますか?」
「……まったく…」
しょうがないなぁ。という感じではありましたが、2人まとめて鷹仁様に抱きしめてもらえました。
親子三人、抱きしめ合える距離にあることが、こんなにも嬉しいのだと、僕は初めて知りました。
「…幸せ、です」
「ああ…そうだな」
「すざくも!すざくもしあわせです!!」
そうしてしばらく僕たちは、三人寄り添って午後の時間を過ごしたのでした。
引っ越し-完-
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