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青もみじの君-弐
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「鷹仁様がそう仰るのでしたら仕方ありませんから、お名前は今度にして、明日までにお返事を書いておきますね」
「ああ、頼む。…と、悪い。もう戻る時間だ」
「はい、行ってらっしゃいませ」
ちらりと腕時計を確認して立ち上がった鷹仁様を部屋の外まで見送り、頑張ってくださいねと声をかけたら、振り返った鷹仁様の唇が、僕のそれに落ちてきました。
「行ってくる。俺が帰るまでいい子にしてろ」
去り際に放たれたいかにも王者らしい言葉と、なのにそれに似つかわしくない優しげなお顔は、まだそんなことに慣れていない僕を一瞬で撃ち抜きました。
「--っ、!…ずるい、」
へなへなとその場に座り込んでしまった僕の顔がさくらんぼよりも真っ赤だったことなんて、絶対に絶対に鷹仁様には内緒です。
「母さま、どこかいたいんですか?」
「葵さま、どうかなさったんですか?」
しばらく膝に顔を埋めていた僕にかかった幼い声。
顔をあげると、心配そうな4つの目。
「朱雀様、真白様。いえ、なんでもありませんよ。そうだ、美味しいさくらんぼがあるのです。今日のおやつはまだですよね?」
「はい!父さまに、母さまのおへやにさくらんぼがあるときいてきたのです」
「そうでしたか。とても甘くて美味しいのですよ。中へどうぞ」
部屋に入った2人によってどんどん減ってゆくさくらんぼを微笑ましく思いながら、僕は先ほどの手紙を読み始めました。
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