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青もみじの君-参
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葵様
お久しぶりに御座います。
この一年、私のようなつまらぬ者と文を交わしてくださり、誠に有難う御座いました。
礼も愛想もない簡素な文にも関わらず必ず御返事をくださり、恐縮でありましたが、同時に、貴方様が産声を上げたその時から当主と共に貴方様を見守って参りました身からしますと、以前のような不遇の扱いを受けていらっしゃいました貴方様のお慰めに、少しでもなれていたのなら嬉しく思います。
当主の迎えが遅くなってしまったことは、私共の不徳の致すところで御座います。心よりお詫び申しあげます。
どうぞこれからは、貴方様に幸多からんことを、僭越ながらお祈り申しあげております。
「---兄様……?」
手紙を読み終わった僕は、青もみじの君の正体の心当たりに、半ば茫然としておりました。
あの頃……、鷹仁様と同じ時間を過ごせていた頃。
鷹仁様の側に、いつも控えていた---鷹仁様の、お世話役。
10年以上前にお世話役だった兄様が、今は秘書になっていたとしても、なんら不思議ではありません。
嗚呼、何故今まで気付かなかったのでしょうか。
そもそも僕が幼少期関わっていた人なんて、ほとんど話さずに淡々と僕の世話をする乳母と、鷹仁様と、兄様くらいしかいなかったのです。
そんな僕に、久しぶりなどと呼びかけられるなぞ、僕が生まれた時から見守っていたと言えるなぞ、兄様だと仰っているようなものではありませんか。
僕はある種確信をもって、お返事を書くべく筆を手に取りました。
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