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ありがとうの日-壱
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視点-鷹仁-
日曜の午後、葵が朱雀と真白に本を読み聞かせる姿を眺めて穏やかに過ごしていた俺の下に、穏やかではない仕事の問題が舞い込んだ。
折角の家族水入らずを邪魔されたことに、仕事とはいえ苛ついた。この俺を休日に呼び出すとはと、トラブルを起こした部下に当たってしまった部分もあるが、まあ許容範囲内だろう。
いつもなら子供たちはもう眠っている時間に漸く仕事を終え母屋に戻ると、珍しく-いや、葵が母屋に暮らすようになってから初めてと言っていい-葵の出迎えがなかった。
挨拶と共に頭を下げる使用人に葵の所在を尋ねれば、朱雀に付き合って自室でなにやらしているらしい。
疲れて帰ってきて、真っ先に妻の顔を見れないことに内心不満を募らせつつ早足に葵に与えた部屋に向かう。
「葵?」
廊下の角を曲がったところで、襖の隙間から部屋の中を覗いていた葵の姿が見え声をかけると、慌てたように中に向かって何かを話し襖を閉めた。
「何をしているんだ?」
「鷹仁様っ!お帰りなさいませ、お疲れ様でございますっ」
明らかに焦っている。挙動不審すぎる。
俺を部屋に入れまいとしているのがありありとわかる。
「ただいま。こんなところで何をしている?部屋に入らないのか?朱雀はどこだ?」
「えっ、ええ…その…」
部屋に何を隠しているんだ?
隠し事をされていることに思わず眉を寄せると、部屋の中から葵を呼ぶ朱雀の声が聞こえてきた。
「母さま!もういいですよー!」
「あっ、はーい!
鷹仁様、お疲れのところ申し訳ありませんが、お見せしたいものがあるのです」
「見せたいもの?」
「はい、中にどうぞ。
いいですかー?開けますよー!」
中に声をかけ襖を開けると、鮮やかに飾り付けられた室内。
「父さま!いつもありがとうございます!」
中に踏み入ると同時に足に抱きついてきた息子。
「当主様、いつもありがとうございます」
その反対側から、その身が隠れるほどの大きさの花束を持ってきた真白。
「朱雀様ぁ…いっしょに持ってください…」
「あ」
花で前が見えずふらつく真白のもとへ駆けた朱雀が共にその束を抱え、渡してきた。
「ありがとう。綺麗な花だな」
「母さまと選んだんです!」
「葵さまと庭師の人に、きれいなお花を教えてもらったんです」
「葵と?」
後ろを振り返れば、柔かな笑顔の葵が口を開いた。
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