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愛しい番よ幸せに-壱
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視点-鷹仁-
「本日奥様は午前6時に起床され、7時より朝餉を召し上がりました。その後12時30分に昼餉を召し上がるまでに読み物を2冊ほどお読みになり、昼餉後は13時25分から14時38分までお昼寝をなさいました。お昼寝から目覚められました後はお気に入りの南の窓際で庭の景色を眺めておいででした。その際些か気になる発言をなさったのでこの後報告させていただきます。--そして18時30分より入浴、19時20分より夕餉を召し上がりました。本日の奥様の食事の献立は先ほどお渡しいたしました資料の中にございます。夕餉後は21時30分まで読書をされまして、22時ご就寝なさいました」
今滝寺家の当主である俺の日課は、仕事終わりに愛しい番である葵のその日1日の行動報告を聞くことである。
「そうか。気になる発言とは?」
「それが……」
いつもはっきりと話す侍女長にしては珍しく、目線を逸らし言い澱むその様子に疑問が募る。
「なんだ?葵は何を言った?はっきり申せ」
「はい。--この世なんて辛い、死んでしまえば幸せにはなれずともこの苦しみからは逃れられるだろうか、と」
侍女長のその言葉に、目の前が真っ暗に染まった。
死。死だと。この世が辛いと。死を望むまでにこの世が辛いというか。
漸く、漸くだ。漸く愛する番と、葵と暮らせるかもしれないと希望が見え始めた頃だというのに。
---死なせてたまるか。
勢い良く立ち上がった俺は離れにある葵の自室へと急いだ。
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