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愛しい番よ幸せに-肆
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とうとうこの時が来たか…。息子もαである以上、番のなんたるかは知らなくてはならない。
---いや、今は母とは何かを教えるだけで良いだろうか。
番のことを教えるのはまだ早いだろうか。
---番とは、番とは……葵、…葵……
少し考え始めると、すぐに思考が葵一色になってしまう。
「とうさま?」
なかなか答えない俺を不思議そうに見つめ、問いかけてくる息子の声に、思考が浮上する。
真っ直ぐこちらを見つめてくるその瞳に、俺と同じ苦しみを浮かべさせたくはない。
そのためには、今のうちに全てを知らせ、そして理解させておくべきか。
そう考えて俺は、息子にΩと番について簡単にではあるが説明をすることにした。
「そうだな…。ああ……、お母さん…というのは、そう、家庭教師の言う通り、お前を産んだ人だ。一緒に暮らせないのは……その人は、父の番だから…Ωだから…共に暮らすことを許さない古くからのしきたりが邪魔をするんだ」
「つがい?おめが?」
「番とは、我々αが生涯唯一愛する相手だ。Ωとは、我々αの対になる存在。αはΩからしか生まれないんだ。だから我々αは、Ωを尊び、大切に慈しむべきなんだ。それなのにくだらないしきたりがそれを許さない」
「しきたりは、やぶれないのですか?」
「長く歴史を持つものを変えることは、そう簡単にはいかない。---だが、お前のお祖父様や父が少しずつ、少しずつ変えて来たんだ。きっともうすぐ、いや、必ず。成し遂げてみせるさ」
この時俺は、無意識のうちに笑っていたのだという。
これまで決して表情を崩さなかった俺が頬を緩めたと、朱雀はその両目を見開き、そして知ったという。
母が、父の番という存在が、なくてはならないと。
「とうさま、ぼくまっています。おかあさんと…かあさまとくらせるようになるのを」
「ああ。但し、これは誰にも言ってはならない。誰かに知られたら、それだけ母様と暮らすのが遅くなると思え」
「はいっ」
満面の笑みを浮かべ部屋を出て行った息子の後ろ姿を見送り、俺は改めて決意した。
---絶対に葵をこの手に取り戻す。
そうしてまさしく鬼のように仕事をこなす俺のもとに、ちょうどこの頃から「青もみじの君へ」と記された葵の直筆の手紙が届くようになったのだった。
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