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愛しい番よ幸せに-漆
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そうして漸く迎えた今日この日だ。
今日まで黙らせ、蹴散らし、踏みしめてきた幾百の屍の上に立ち俺は、葵をこの腕に抱けるのだ。
「朱雀」
「はい、とうさま」
呼び出した息子は俺の前に正座し、まっすぐな視線を決して逸らすことなく俺が話し出すのを待っている。
嗚呼、大きくなった。
生まれてから、今日まで。
俺の息子として見てやれたことなど、片手で足りるほど。
総ては葵のため。
葵がΩとして認められるために生まれたα。
葵に肩身の狭い思いをさせないために。
後継として、厳しく接したことなど両手で足りぬ。
葵を、もう一度この腕に抱くために。
鬼と言われようと、例え血を分けた息子であっても。
そう思っていたが。
真っ直ぐ此方を見つめる大きな瞳は、葵にそっくりだ。
ピンと伸ばした背筋も、これから告げられることに怯えるように膝の上で握り締めた小さな手も。
葵。
お前が案じることは何もない。
「以前、母について話したのを覚えているか」
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