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第3話
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チヨチヨと鳥の声が聞こえる。
目を開けるともう朝になっていた。
どうやら昨日の昼からずっと寝てしまっていたらしい。
だいぶ疲れの取れた体を起こし、伸びをする。
腰に巻きついてた大雅の手を引き剥がし服を着替えていると目が覚めたばかりで眠そうな顔の大雅がむくりと身体を起こした。
「おはよ〜…何でこんな早く起きてんの…今日、日曜日だろ…」
「今日出かけるって言っただろ、遅くならないようにする。大雅のお母さんまだ大雅の家にいるんだろ?ここにいてもいいから」
「ん…。」
不機嫌そうな顔で軽く返したあと、しばらくして大雅は再び眠ってしまった。
あれこれ準備をしているうちに時間はどんどん過ぎていた。
慌てて靴を履き玄関を飛び出す。
家を探す際、安くて一人暮らしのできる家を真っ先に選んだので駅やスーパーからは少し遠い。
走ってもあと20分はかかってしまうだろう。
連絡を入れた方がいいかもしれない。
そう思い携帯を取り出し連絡先を開いた瞬間、着信がなった。
「もしもし?」
「もしもし、真尋?奏汰だけど。」
阿井だ。グッドタイミングすぎる。
「あ、ごめん、俺少し遅れるかもしれなくて…」
「まじ?今どこにいる?」
「まだ、家の前にいる…本当にごめん!!」
誠心誠意謝るしかない。
誘ってもらった分際で遅れるなんて失礼にも程がある。
「わかった!迎えにいくわ、待ってて」
そうしてブチっと電話が切れた。
迎えにいくって…アイツ車とかバイクなんて持ってないよな…しかも家の場所教えた事あったっけ?
しかし待っててと言われたら迂闊にここから離れられない。ぐるぐると家の周りを徘徊する。
するとしばらくして遠くの方から息を切らしながら走ってくるやつが現れた。
「真尋ー!!お待たせー!」
車でもバイクでもなくまさかの徒歩かよと心の中でツッコミをいれる。
「いやいや、全然待ってないし俺が遅れたりしたから…つかそんなでかい声で呼ぶなよ」
大雅がもし起きたらややこしいことになる。
最悪、ライブに行けなくなるかもしれない。
「え、なんで?」
「あー、いや…いいや、とりあえずもう行こうぜ物販行きたいし!」
無理やり手を引いて颯爽と駅への道のりを進む。
最初は戸惑っていた阿井も「そうだな!」と足を進めた。
物販はやはり人気バンドだけあって凄まじい混みようだったが早く行った甲斐あって目当てのラバーバンドとバンドタオルを買うことが出来た。
開演まであと20分といったところだろうか。
気持ちが昂りそわそわしてしまう。
「真尋めっちゃウキウキしてるね」
ニコニコとしながら、からかい混じりにそういってくる阿井に「お前もじゃん」と言いながら少し肩を叩いた。
阿井は「まぁね」と少し笑った後「そういやさ」と横に向けていた体を真尋の方へと向けた。
「さっきさ、大声で呼ぶなよっていったじゃん?あれ、なんで?」
急に随分と真面目な調子で尋ねてきたため、思わず「え?」と聞き返す。
「誰かに、怒られるの?」
まっすぐな目で俺を見つめながら阿井はそう言葉を続けた。
「別に…怒られ…ないけど」
「本当に?」
どこか不安げに聞いてくるその言葉の真意が全く読み取れない。
本当に?ってどういうことだよ、そう口を開きかけたと同時に「開演5分前になりましたので、開場への入場よろしくお願いしますー!」と誘導員の呼びかけが入ったためその言葉は遮られた。
「…とりあえず開場入りしようか!」
途端に屈託のない笑顔に変えた阿井にポンポンと背中を押され、少しモヤモヤしながら足早に開場入りをしたのだった。
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