アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
第66話
-
しばらくそちらを見ない間に、飲み比べ対決は泥沼化していた。
一番端で小さくゆらりゆらり揺れながらテーブルに顔を突っ伏している赤毛にその隣でニヤニヤと笑いながらグラスの中にあるビールを口に流し込んでいる帽子を被った影が「シマぁ〜〜」とベタベタくっついていて少し間があき、隣で固まっている名波さん、大雅、長坂店長は、お互いがお互いを睨み合い、ただただひたすらに酒を煽って、相手の様子を伺っている。
が、よく見れば、もう名波さんはフラフラとあっちこっちに体を揺らしているので、後は大雅と長坂店長の一騎打ちといったところだろう。
「はい、シマくんとジロくんと名波ちゃんは、もうおしまい。お冷飲んどきな。…あとは曙さんと大雅くんかな?」
あらかじめ用意しといたのであろう氷の入ったお冷を、脱落組の隣においた大悟さんは、ふぅ、と溜息をつきヤレヤレと肩を竦めて、真尋の方へとやってきた。
「大雅くん、あとどれぐらい飲めそう?」
「あ、えっと、多分…もっといけると思います、酔ったところ見たことないし」
急な問いかけにしどろもどろになるも、大悟さんはその応えに何か決断をしたらしく、わかった、ありがとね、とカウンターにいた店員から見た目からして一番キツそうな度数の酒瓶をもらって再びそちらへ戻っていった。
「じゃあ今から飲み比べ対決サドンデスということで、俺とこれで飲み比べをしましょう」
ダンッと机に酒を構えてニタリと笑う大悟さんは悪党じみていて、なぜか背中にヒンヤリとした冷や汗が伝った。
隣で座っていた華楠さんも「これはヤバいなぁ」とニヤニヤ笑っているので何がやばいのか聞いてみると華楠さんは近くにあった唐揚げを頬張りながら機嫌良さそうに説明し始めた。
「大悟さん、onlyの従業員の中でいっっっちばん、お酒強くて、ザルを超えた、ワク?っていうの?そんな感じでさ〜!あの長坂店長も大悟さんだけには毎回敵わなくてね〜。今からが本当の勝負って感じかなぁ〜」
さも愉快と言った様子でケラケラと笑っている華楠さんを見ると、あぁ華楠さんも、もうだいぶきているな、と静かに察っすることが出来た。
大悟さんにレフェリーを任されたカウンターの店員もただならぬ空気に押されたのか、やや緊張気味に1人1人に注がれる酒をじっと見つめている。
すべて注ぎ終わったところで、大悟さんはその店員に視線を送った。
「レディ…ファイト!!」
先程から一言も発していない様子から見るに、本当は長坂店長も大雅も相当酔っていたのかもしれないが、ふたりを含めた3人は間髪入れずに一気にそれを飲み干した。
プハァ、と心地よいため息が室内に響き、それぞれから「もう1杯!」と声が上がる。
それから次々に上がったこの「もう1杯!」が聞こえなくなったのは、そんなに遅くはなかったと思う。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
79 / 89