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いかないで。19
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あれから倉田はずっとむくれている。
こっちを見てくれないから目も合わないし、
うつむきがちで伏せていて、少し口を尖らせていて、倉田には悪いけどずいぶんと可愛い。
そんな倉田の尖らせた唇に、これは喜んでいいのかどうすればいいのかわからないが、ピンク色のグロスを塗るという任務が課せられた。
こんなこと生まれてこのかたしたことないよ。
まして好きな子の唇にグロスを塗るなんて
誰が予想できたことか。
「倉田、さっきのことはごめん。
ちょっと口、普通にしてくれない?」
「………普通ってなにそれ。僕は普通だもん。」
ますます唇を尖らせてしまった倉田を抱き締めたい衝動にかられてしまう。
あーーーもう。
可愛い。ほんと可愛い。
倉田は俺をどうしたいんだ。
「じゃあ、このまま塗っちゃうよ?」
倉田はさらにムッとした表情で少しだけ唇を元に戻した。
倉田のふわふわとした唇に、ベビーピンクがのびていく。
塗っていくうちに、倉田の唇が少し開いて見えてしまった舌になんだかドキドキして、唇を閉じるように上唇を塗った。
「ん、できた。可愛いよ。」
「………嬉しくないもん。」
これはいい照れてるのか拗ねてるのか微妙なラインだな。まぁいいか可愛いから。
もう俺の思考は倉田可愛いしか唱えられなくなってきた。
末期症状かな。
「おうおういいねいいね!
おじさん感心しちゃうよ!」
先程の女子が親指をたてながら近づいてきた。
ほんとにおじさんみたいな動作だ。
「よし、そのまま髪の毛もしちゃおうか!
こっちおいで倉田くん!」
もう倉田はこれ以上抵抗する気はないらしく
おとなしく教室の端まで行って座ると、女子たちに髪の型はどれがいいのかという話に入れられていた。
俺は黒髪のセミロングがいいとおもう。
俺が思うだけだけど。
お、女子が選んだのは………
!!!
黒髪セミロング!!
心の中で一人ガッツポーズをする。
しばらくして完璧に準備できた倉田はそれはそれは可愛くて、ほんとに男子かと疑ってしまうほどだった。
何人かは唖然として見ているし、スマホを構えているやつもいる。
……おいまて男子は撮るなよ。
「………ほんとに僕本番もこれ着なきゃダメなの?」
「ん~?これだけじゃないよ?三日間あれから、
それぞれ違うの着てもらうし」
倉田の表情が、違う、そうじゃない。と言っているようで笑ってしまう。
「倉「実行委員の人いる?」
倉田を呼ぼうとしたとき、教室の入り口から声がかかった。
この声を聞いて俺は心底自分の心の狭さを感じ取ってしまった。
「……え、蒼…?」
ぽそっと聞こえた倉田の声に、上野がこちらを見るが、キョロキョロしてから首をかしげた。
「ん?秋いる?」
どうやら倉田には気づいていないみたいで俺に聞いてきた。
このままいないと言ってしまおうか。
こんなに可愛い倉田を見せたくない。
「お、上野くんよくぞ聞いてくれました!
倉田くんならここだよ!」
おいそこの女子ーー!!
何勝手なことしてんだよ!
いやまぁ当然と言えば当然の反応だけど今だけは何もしないでほしかった!
「え、秋?なん……え?」
案の定上野は驚いて状況が飲み込めていないようでクラスの女子たちは満足している様子。
倉田は両手で短いメイド服の裾を押さえてぷるぷるしていた。
白い頬はピンクに染まり、先程塗ったばかりの唇は艶々と光っている。
足は黒いニーハイソックスで細さが際立ち、短い裾から除く太ももは白い。
「……あんまり見ないで!!!!!」
倉田は上野に向かって叫ぶと教室を飛び出していってしまった。
「倉田!」
俺は追いかけようとして、足を止めた。
今までの倉田の表情がフラッシュバッグする。
もしここで俺が行ったらどうなる?
またいつもみたいに倉田が泣くだけで、倉田が上野のことを思って悲しくなるだけなんじゃないか?
それなら………
俺はまだ固まっている上野に向き直ると声をかけた。
「上野、倉田のこと探してきてくれないか?」
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