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お豆腐屋さん 7
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side 秋
なんかさっきは自意識過剰にもドキッとしてしまったけど、蒼がステージ袖にはけてからは普通に劇を楽しむことができた。
というか、さっきの場面をかき消すように怒涛の展開があって。
抜粋すると、
主人公の家に借金取りがお仕掛けてきたり、主人公の義理の姉のせいで学校でいじめにあって孤立したり、通くんが交通事故にあったり、、、、
しかもその時全部、主人公は靴片方しか履いてなかった。
え、なんで????
通くんが交通事故に合うのもめちゃめちゃに謎だった。特に前触れもなくひかれて、なんのナレーションもなくそのシーンは終わり、主人公がそのことに触れるようなセリフもなかった。
え、ほんとになんで???
「笹本なんか突然に消えたな」
城田くんも理解ができなくて、というか一瞬だけ会場が全体的に、「???????」っていう空気になった。
まぁここは学生クオリティーってことかな??
スポットライトが主人公だけを照らす。
「あーあ。お腹が空いたのに、お金がない。借金取りのせいで、家にも帰れない、、、、。」
「私はこのまま、どうやって生きていけばいいの??」
このセリフに、悲しげなBGMがかさな、、、
ん?
「やっと見つけました、お嬢さん」
「!!!貴方は!!!」
悲しげなBGMじゃなかった!
お豆腐屋さんのトラックだった!!
蒼が、靴片手に登場する。
「ずっと探していました。」
そしてひざまずいて
「僕と結婚してください!!!」
え、いきなりのプロポーズ??
好きとか言わないの??
靴片方がぴったりの人見つかったら即日プロポーズって、
なんでそこだけシンデレラに忠実なの。
「でも私、、、借金が」
「それなら気にすることはない!!!」
ステージが暗転して。
次にライトが照らすと、蒼はスーツ姿になっていて。
「僕の本当の身分は、豆腐屋じゃない。」
「え!!!まさか!!!」
御曹司、、、とか?
「医者の息子、、、さ!!!!」
いや医者の息子って!!!
すごいけどね??
いや医者の息子て!!!もっと、社長とか資産家とかの方が物語的にもいいんじゃないの??
シンデレラだよね??
一応シンデレラなんだよね??
「こうして女子高生の神田 麗蘭は、医者の息子のお嫁さんになり、末永く幸せに暮らしましたとさ」
お、終わってしまったーーーーー!!!!
無理矢理終わってしまったーーーー!!!
結局通くんは謎だったし、蒼がなんでお豆腐屋さんしてたかもわかんなかったけど終わっちゃったよ!!!
「主人公の名前だけシンデレラに近いだけじゃねーか」
「ホントだよね、、、」
しんでんれいらんって。
面白かったけど、なんかもやもやする終わり方。
「出るか。」
「うん」
「俺この後明日の演奏のリハ行かなきゃなんだけど、倉田はなんかある?」
「ん〜特に何にもないけどグルーっと見て回ろっかな〜」
まだ見てないクラスあるし。
「一人で?」
「え、だめかな」
「また変なやつに絡まれたら困るだろ」
「いやそんなに何度もはないでしょ」
「いやあるから、危ない。」
「大丈夫だよ〜!もう平気!万が一あったら今度は思いっきりパンチする!」
「いやそんなん可愛いだけだから」
「何を言ってるの!?」
「ん〜、、、、心配だな、、、」
城田くんがめちゃめちゃ心配してる。
目の前であんなに大げさに怯えられたら心配にもなるか、、、、。
もう大丈夫なのに申し訳ない。
「じゃあ僕、一回クラスに戻っ「秋くん」
この声。
「通くん?」
さっきの格好とは違って少し着崩した状態の通くんが駆け寄ってくる。
「見に来てくれてありがとう!ステージから見つけたからさ、急いできちゃったよ」
さっと城田くんが前に出る。
「笹本、何?」
「何って?別に秋くんがいたから声かけただけだよ。、、、城田には話しかけてないけど?」
、、、通くん、城田くんに対してはすごく冷たいような?
あの泣いてしまった日の通くんみたいで、怖い。
あの日まで、通くんは誰に対しても元気で明るくて、裏表のない人なんだと思ってた。
だから凄くびっくりして、今までのことも意図的に、僕に対してわざとだったんだって知って、本当に悲しくなった。
きっと蒼も知らない。
それなのに、城田くんに対しては冷たくて、普段の通くんとは真逆で。
「いつの間に二人、仲良くなったの?、、、まぁ、どうでもいいけど。」
「笹本に関係ないだろ。」
「だから、どうでもいいって言ってんじゃん。
てか、城田に用はないから。僕は秋くんに用があるの。城田ジャマ。、、、ね、秋くん、この後暇?一緒に回らない?」
え。
「蒼もいるんだけどさ。3人で一緒に回ろーよ。いつもみたいにさ。」
また、前みたいに?
3人で?
「、、、どうして?」
「どうしてって、一緒に回りたいからじゃん。最近全然話せてないしさ。」
「、、、また、僕のこと、邪魔者扱いしたいんじゃないの?」
「、、、え?」
通くんが何故か意外そうに僕を見る。
「だから、、、やだ。」
また二人が仲良くしてるのを見なきゃいけないの?僕はもう、蒼のこと諦めたいし、前に進みたいのに。
「片付けとかあるんだろ?戻れよ、笹本。」
「城田は黙っててよ。」
通くんがさっきよりも前に出る。
「、、、もうそんなことしないよ。また3人で仲良くしたいだけ。ね、一緒に回ろう?蒼と秋くんと僕でさ。また前みたいに。」
通くんが何を考えて、どうして僕に声をかけるのか、分からない。
ほんとに?
また、前みたいに?
蒼が、通くんを優先するよりも前の。
僕が、蒼と付き合うよりも前の。
あの頃みたいに?
僕は、全部、諦めたいのに。
蒼も、通くんも、今の関係も。
あの頃の僕らも。
断らなきゃって。
そう思うのに。
でも、通くんがまっすぐ僕を見るものだから。
あの頃を、手放しきれない僕がいるから。
「、、、ほんと?」
「うん、ほんと。ただ、一緒に回って、しゃべって。だって僕ら友達でしょ?普通のことだよ。」
「、、、わかった」
「倉田、」
「秋くんがいいって言ってるんだから。いい加減にしてよ、城田。別になんにも悪いことしないよ。、、、じゃあ秋くん、ちょっと片付けてくるから。」
「うん」
最後に城田くんを見て、通くんは片付けにいった。
「じゃあ僕、外出て二人のこと待っとくから。城田くんはリハーサルでしょ?」
「いや、、、一緒に待っとくよ。」
「時間大丈夫なの?」
「うん。、、、倉田、さ。やっぱまだ、、」
「?」
「や、なんでもない。外でとくか。」
通くんと蒼が来るまで、外で城田くんと明日の演奏会の話をした。
城田くんはソロがあるらしい。
絶対聞かなくちゃね!
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