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最悪のタイミング
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「もうそろそろかな…」
壁に掛けられた時計を見てそう呟いた
テレビもつけず、聞こえるのは時計の秒針だけで
何となく時刻が迫るにつれて緊張が高まっている
ピンポーン…
インターホンが鳴ったと同時に小走りで玄関先へ向かう
「はー…い」
「来ちゃった♡︎」
「……」
扉の先に居たのはホテルに置き去りにした女だった
「ちょ、今無理、帰れ」
「えー?なんでそんな事言うのー?せっかく来たんだし中入れてよー♡︎」
「おい、無理だって、ちょ何勝手に入ってんだよ」
「お邪魔しまーす♡︎」
女は高いヒールを脱ぎ捨ててズカズカと廊下を歩いてリビングへと向かう
その後を追うように中へ入り女の腕を引き動きを止めた
「待てって」
「っきゃ……」
「マジで帰れ、今日は無理だから」
「……なんでそんな怖い顔するの、ホテルに置いて帰ったくせに……」
「それ今関係ねーだろ」
「関係あるもんっ!その代わりに今日はあたしの言う事聞いてもらうからっ!!」
キーキーうるさく鳴くその声に頭が痛くなり
口を押さえて黙らせ、そしてまた低い声で言い聞かせる
「また今度言う事聞くから、今日は帰ってくれる?」
「んー!んー!」
「分かった?」
念押しで聞くとゆっくり頷き、押さえた手を離した
「帰ったらいいんでしょ…!分かったよ…!!」
「最初っから言ってんだろ」
「ふーんだっ!」
ぷっくりと頰を膨らませあからさまに
不機嫌になった女の頭を軽く撫でてやる
そうするとその膨らみは徐々に無くなり
次第に頰を赤く染め始める
「玄関まで送るから」
「うん…♡︎」
二人で玄関先まで歩いて行き、女はまた高いヒールを慣れた様子で履き扉に手を掛けて開いた状態で止まった
するとクルッと振り返り口を開く
「帰る代わりにキスして♡︎」
「………はぁ、いいよ」
めんどくせー女…
「っん……♡︎」
「これでい………」
「うん♡︎いいよ♡︎……どうしたの?」
自分の目を疑った
女から視線を変えるとそこには渚と男が立っていた
「渚……」
「シンちゃん帰ろ…っ」
「あ、おい待てよ…!」
「来ないで………っ!!」
聞いたこともない渚の大声が周りに響き、思わず体が固まってしまった
「来ないで…お願い……」
「渚…」
「こんな、こと…するためにわざわざ呼んだの……っ?見せびらかさなくたって………さよなら、たっちゃん」
渚の大きな瞳から流れた涙に胸が痛くなり
手を触れたくても触れられない
また泣かせてしまった
渚の泣き顔を見るのは何度目だろう
渚の後ろ姿を追いかける事が出来ずただ見えなくなるまでじっと動かなかった
その後を俺の知らない男が追いかけ
途中で止まりこっちを振り返って何かを言いたげだったが
もうそんな事どうでもいい
渚は帰って来ない
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