アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
ちょっとだけ傷ついたな
-
昔、ある人に言われた
『君はいつ迄経っても何者にもなれない。この先、何かに興味を持ったらそれに没頭なりするのだろうけど、それは多分すぐに飽きる。だって、興味を持った。それ自体が嘘なんだよ。周りがそれをやっている、持っているからやるんだ。だから途中で飽きて辞めてしまう。君は多分、死ぬまで自分に、他人に嘘をついて暮らすんだ。この先一生ね』
そう私に言ったあの人はもうそれきりだ。
そんな事は分かってた。
自分が息をする様に嘘を付くのは分かってた。
誰にもバレてなんてなかった。
あの人だけ。嘘を見破ったのは。
だからあの人の事は好きだった。
けど、その言葉を聞いた後にはあの人はもうどこにもいなかった。
いなくなってから少しだけ後悔して、嘘はやめようと思った。
でも駄目だった
これはもう癖。
嘘を付くたびに胸に痛みが染みるけど、
癖になって
止まらなくなって
自分が真実か嘘を言っているのか分からなくなる。
「ああ……あの人に言われた時に辞めとけば…嘘を付く癖はなくなったかな…」
まあ、いいか。
どうせもう治せない。
あの人もいない。
自分が笑うタイミングも、泣くタイミングも全て嘘だ。
多分、もし嘘を付くのが治ったとしたら、真実のタイミングなんてわからないから複雑な顔になって周りから不審な目で見られるだろう。
真実を言って辛くなるより、嘘を言って楽になる方が何倍もいい。
肺まで吸うと噎せ返る様な煙草独特の味がする。
苦い。
けどやめられない。
嘘と同じ。
癖になる。
嘘を付くたびに煙草の味を思い出す。
煙草を吸うたびに嘘を付いた事を思い出す。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
1 / 17