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「俺の家、近いからさ……傘、持ってこようか? 」
全身をこわばらせたまま、その質問にふるふると首を横に振った。
「いら、ない……」
そのか細い声はとても中性的なそれで、見た目と相まって性別さえも掴めない。
とりあえず身体を拭かせてやりたいが、小学生高学年くらいと見えるその子が女の子であれば、家に上げるのは躊躇われた。
だが、家に母がいることを思い出し、その時は任せようと妙案を思いついた。
「そのままじゃ風邪ひいちゃうからさ、せめて身体だけでも拭きに来ない? 俺の親、いるはずだし」
その言葉にも少しの間も開けず、「いらない」と小さく返ってきた。
「僕、は捨て、られた……から、も、死ぬ、の。だから、いらな、です、」
「僕」と言うことは男だろうか。
その少年は、そんな悲しいセリフをなんてことないことのように吐いた。愛玩動物でもないのに「捨てられた」とはどういうことだろうか、と問いたいところではあった。
だが、長い前髪から覗いた黒目がちの大きな瞳が、あまりに深い絶望を宿しているように感じられ、その質問を口にすることは憚られた。
「とりあえず、俺ん家来いよ。な? 」
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