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痛いほど(幸輝)
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それからというもの、僕の引っ越しが始まった。
あっくんと住んでいたところから、最小限の荷物だけ持ってくる。
持ってきてくれるのは、
――ピンポーン
「こんにちはー、コウの荷物持ってきましたー」
もちろん、あっくんだ。
発情期も落ち着いて、拒絶反応も出なくなった。
今なら、前みたいにあっくんと接することができる気がする!
――ガチャっ!
「あっく…え?」
あの時見た、昼間の…綺麗な女の人。
あっくんのもう一人の番、だっけ?
「この人だから。
コウ、どうせ信じてなかったでしょう?」
なに、見せつけたいわけ?
本当だからって!
なら
「項、見せてください。
噛み跡あるか見るまで、信じません。」
その人に話しかける。
比較的キツい口調で話したのに、その人は『あぁ、そうだね』って
軽く流して、後ろを向いた。
少し長い髪を流して、服をぐんと下げたそこには
噛み跡が、生々しいほど綺麗についていた。
――ピリピリっ
「っ!!」
反対に僕の噛み跡は次第に薄くなっていっている。
少し前までは、指先でかろうじて分かったのに
もう目を凝らしても分からないくらい
元は、歯型がくっきり。
触ればすぐ分かるくらいの凸凹があって
その傷は少し赤みがかっていた。
「ゆきちゃん、大丈…、
ゆきちゃん、項…」
後ろから来たはるさんが、僕の項を撫でる。
普通なら嫌なんだろうけど
はるさんだからなのか、全く嫌に思わない。
それが、僕は嫌だ。
「ま、まぁ上がって
とりあえず、お茶飲んでから作業しよう?」
はるさんが、僕の肩を抱いてなだめるようにさすりながら
未だ、靴も脱いでいない二人に目配せをした。
―――――
「お二人さん、コーヒーと紅茶どっち?」
キッチンから顔を出して言うはるさん。
僕は、なんだか不安で、なにか掴んでいたくて
はるさんのTシャツの端っこを握って
ついて回っていた。
それを、邪魔だとも言わずに
コーヒー3杯と、僕用のほうじ茶を作り終えると
お盆にそれらを乗せて僕に持たせると
「ちょっと、トイレ」と行ってしまった。
おおよそ、話しておけって事だよね…
「えぇっと…」
僕はどこに座れば…?
「コウ、俺の前座って?
話したい事がある。」
なに、真剣な顔しちゃって。
「番を解消したい。」
「うん」
至っていつもどおりのその声。
だからこそ怖くて…
「それと、俺も引っ越すつもりだから
荷物を全部ここに持ってきてほしい。
まぁ、すぐにとは言わないし
一緒に使ってるのもあるから選別に時間がいるだろうけど。」
え、なんで?
「ぃ、いやだ」
なんて言えば、ちゃんと伝わるのかわかんなくなって
口から出たのはそれだけだった。
「コウ。
運命の番ってさ、地球上に一人しかいないんだ。
コウには はるさんだけ。はるさんにもコウだけ。
これがどれだけすごい事か、わかるだろ?」
わかるけど。
「だから、コウははるさんと居るのが一番。
それがコウにとって、一番幸せなんだよ。」
――パチンッ!
「きゃっ!ちょっと、あんた!
番なら知ってるでしょ、篤哉の顔殴るなんて…」
「うるさいよ、あっくん。」
あっくんは、こっちを驚いた顔で見てる。
「僕がはるさんと居るのが一番幸せ??
なんで、あっくんがそんなこと決めるの?
勝手に決めんなっっ!!!」
「コウ…」
前も、こうやって 僕が一方的に怒ることあったな。
でも、今回は多分 前のそれよりも
のしかかるものが大きい。
「なんで、僕らが一緒に居られる方法を考えようとしてくれないの?!」
あれ、なんかおかしい…
苦しい…
「コウ、ちょっと落ち着け!」
「はっ…なん、でっ、はっ あっくん…
僕、すき、って…ゲホッゲホッ」
あぁ、息がちゃんと出来てないんだ。
あれだ、過呼吸ってやつだ。
そんなことがわかっても、混乱する頭じゃ
対処法が思い浮かばなかった。
「は…は、るっ…」
「ゆきちゃん?
ありゃー、今度は過呼吸ね。はいはい。」
はるさんは、ぜーぜーいってる僕を横目に引っ掛けただけで、その足をキッチンへと向けた。
どうやら、その行動があっくんを刺激したらしい。
「おいっ!お前、医者だろ?!
コウ治してやれよっ!!」
凄い顔で怒ってる…ように見える。
視界がぼやけて、朦朧としてるから…僕の都合のいい夢だったりするんじゃないかな…
「は…る、さ」
「はいはーい、ゆきちゃん深呼吸して待っててね」
「おいっ!お前なぁ?!!!!」
ドカドカと歩いて、はるさんの方に行くあっくん。
まだ、僕の為にそんなに怒ってくれるんだね…
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その頃の凛さんの心境
「んんー。これ、私どうしたらいいのかなぁ…」
考えてみてください。
彼氏と、彼氏の元カレと、その元カレの彼氏。
これ程までに居づらい空気はない。うん。
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