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それから光彦とはまた遊べるようになった。
相変わらず、彼は優しくて、面白くて、時々弓道を教えてくれた。
私が冬のマラソン大会で三位を取った時は物凄く褒めてくれたし、一緒にアニメを見たし、漫画の貸し合いっこもした。
そうしている間に季節はまた巡って光彦は高校三年生になった。
私はまだ小学生だった。
光彦は最近勉強していることが増えた。
2人で去年見れなかった花火を見ようと神社で遊んでいる時でさえ、光彦のカバンには分厚い数学IIIと書かれた教科書が入っている。
なんで算数のことを高校生はわざわざ数学と呼ぶんだろう…
「ねぇなんでそんなに勉強するの?」
光彦に買ってもらったお好み焼きを食べながら、まだ上がらない花火を待っている。
「大人になるためだよ」
「えーやだー」
最近勉強の時間割が増えたのだった。
体育の時間は減るし、学校が嫌になっていた。
「俺もやだなー」
「じゃあ勉強しなくてもいいじゃん。ずっと体育がいいよ」
「んーそういう生き方も探せばありだろう
けど俺は勉強しなきゃいけないんだ」
「なんでよー?」
「医術の神様になりたいから」
ん……?
「神様になるのに勉強しなきゃいけないの?」
「そうだよ」
「神様なのに?」
「そう」
「ふーん」
なんか、変なの……
「光彦」
「なに」
「いつ死ぬかは神様が決めるの?」
口を閉じると急に静かになった気がした。
「………」
「………」
ずっと聞けなかったことがあった。
じいちゃんが死んだあの日からずっと………
「いいや」
その返事に知らず知らずの内に込めてしまっていた力が抜けた。
「そっか」
「だけど何才ぐらいまで生きるかは分かるよ」
「え?」
「知りたい?」
「知りたい」
持っていた割り箸も置いて光彦の言葉に集中する。
「そうだね、あの木はあと50年くらい、あの花はあと一週間、夕方ここに来ていた鳥はあと一年、あの星はあと、途方も無いぐらいの年月…」
光彦の指先が動くたび追いかけた。
そしてその指は私の心臓へと向かった。
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