アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
、
-
タァッッッン
軽くて高い音だった。
放たれた矢は少し曲がって的のすぐ横三時の位置に刺さった。
「光彦」
声をかけると残身を取ったまま首だけをひねって光彦はこっちを見た。
「よ、先やってる」
「うん」
弓を置いて袴に着替えるために更衣室へ向かう。
みちと光彦を二人きりにさせることに不安を感じたが、みちが頑張って光彦を知ろうとしているのだからお節介かもしれない。
安定期に入るまでは私も弓を引いていなかったから、久々に袖を通した道着はパリッとしていた。
袴を着けて、足袋をはいて道場に戻ると、みちが弓と矢を出してくれていた。
光彦と会話したかどうかは分からないが。
私が戻ってきたのが分かると光彦は弓を引くのを止めた。
三人で神棚の前に立つ。
「神前に、礼!」
光彦の声に合わせて頭を下げる。拝礼が終わると気持ちが引き締まった。
「じゃぁ、俺は的前で引いてるから、準備できたら三人で立ちしようよ」
「…?みちは弓は引けないから、二人だよ」
「え?そうなのか…どっか痛めてるのか?」
「妊夫が弓引けるわけないだろう?」
「引けるよ」
「「え?」」
「引けるよ、弓」
「………」
「光彦…」
「安定期に入れば弓は引ける、出産前まで弓を引てた人間を何人も、俺は知ってるよ」
「………」
「…安全なんだよな?」
「みち?」
「ああ」
さも当然ことのように光彦は言い切った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
35 / 51