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一度に四射、休憩や矢取りををはさみながら立ちを四回。
一六本引いて中ったのは五本だった。
みちは三本、光彦は一三本だった。
「あんた凄い綺麗な射をするんだな」
「ありがとうね」
矢取りから帰ってくると初めて二人が喋っているのを見た。
「どのくらいやってるんだ?」
「さぁ、二十年ぐらいじゃないかな」
「二十年…」
「でも全然下手くそっだよ。誰よりも的前に立たせてもらえるまで長かった。それでも中らなかったしね」
「そうなんだ。そりゃ、辛いな…」
「顔もたくさんぶった、血が出たこともある」
「あんたがか?」
「それぐらい俺は弓道に向いてなかったんだよ」
ぎこちない会話だった、弓道でしか繋がらない会話だった。
だけどこれがみちにとっても精一杯の歩み寄りだった。
「矢取りをありがとうな。こっち座れよ」
「ありがとう」
「うん」
三人で畳に座る。
だけどその距離はまだとても遠くて…
光彦のことをみちが仲良くなってくれることを願わずにはいられなかった。
「なぁあんたの中仕掛け、ボロボロじゃないか?」
日も傾き始めそろそろ帰ろうか、という雰囲気になったとき光彦の弦を見てみちがそう言った。
「確かに、治してけば、光彦」
「いいや、これでいいんだ」
「でもそれじゃ…」
「二人ともちょっと見ててくれないか?」
「いいけど」
光彦は自信ありげにまた、笑った。
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