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予兆
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「〇〇線は人身事故のため只今運転を見合わせております。運転再開の見込みは立っておりません────」
アナウンスを耳にした途端、背中に嫌な汗が滲むのを感じた。大丈夫、リラックスして、と心の中で繰り返し唱えるも、バクバクと動悸は高まっていく。見渡す限り、構内のベンチは全て埋まっている。
一つ無理やり大きく深呼吸をし、鞄からスマートフォンを取り出す。スマートフォンを持つ震える片手を、震えを鎮めるようにもう一方の手で撫でさすりながらLINEを開く。
(誰か、声、聞かせて、)
伊織───何でも───病気のこと以外は全て───相談することのできる、一番の友人。
「もしもし、伊織?ごめ....今大丈夫?」
「凜?どうした?急用?」
「.....ってわけぢゃ、ないんだけど、」
「ふーん?ごめん、今、夕飯の途中なんだ。また後でかけ直してもいい?」
「....ううん、大丈夫。また、明日、学校で」
伊織の返事を待たずに、一方的に電話を切る。思わずフーッと大きなため息が出る。現在時刻は18時45分。普段なら帰宅しているはずの時間だが、今日は自習室で勉強していて学校を出るのが遅くなってしまったところに、運悪く人身事故が重なってしまった。夜遅くなるほど発作が起きやすくなるために、18時以降の不要な外出は極力控えている。
不安と焦燥でその場にしゃがみ込みそうになるのを何とか堪えて、電光掲示板を確認する。
(△△線なら、動いてる、みたい.....)
△△線は〇〇線より駅と駅の間の距離が長く、しかも3ヶ月前に発作を起こしていて、それ以来乗っていない。しかし〇〇線の運転再開はいつになるか分からない。このままここで立ち往生していては、意識を失うのも時間の問題だ。
(....乗るしか、ない......)
手の震えを誤魔化すように拳をぎゅっと握りしめ、△△線のホームへと向かった。
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