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志麻とソラの日常
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校庭に野太い声が響き、橙色の光が差し込む廊下には、金管楽器の音色が教室から響いている。
その廊下から続く渡り廊下は橙色と水色の光に揺らめき、保健室や委員会の本拠地となっている部屋がある南校舎へと誘う。
南校舎の五階にある生徒会室。
そこは教室二つ分ほどの広さがある。
前方の二段四枚になっているスライド式のホワイトボードには『本日締め切り』という文字に赤い下線が引かれており、幾つかの書類がマグネットで貼られている。
廊下側にはファイルがびっしり並べられ灰色の棚が二つ連なっており、中央には会議机が縦に三枚三列、計九枚が隙間なく並べられている。
その会議机のトップ、所謂お誕生日席と呼ばれる位置のパイプ椅子は廊下側を向いており、そこに坐っている志麻史泰(シマフミヤス)は静かに書類へと目を滑らせていた。
深く腰掛け、すらっと長い脚を組み、背後を橙色に染められたその姿は、学校の王である生徒会長と呼ぶに相応しい。
室内は王に従うようにひっそりとしている。そうかといって無音というわけでもなく、カサッと紙がすれる音や、タッタッタッとシャープペンシルが机とぶつかる音、カチンッとホッチキスを留める音がポツポツと浮かんでいる。
その音の中を、席を立った庶務の峰岸紫音(ミネギシシオン)が去年のファイルを抱え自席を離れた。
先程とは異なる資料に目を通している生徒会長の机へと向かう途中、彼の表情が、雰囲気が、いつもより柔らかいような気がした。
「会長、ご機嫌ですね」
そう声を掛けファイルを差し出せば、志麻は受け取りながら顔をあげた。
その表情には僅かな驚きが載っていた。
「そうか?」
「ええ」
峰岸が微笑んで肯定すれば、志麻は目を逸らした。
今までしていた音は、彼らの行方を見守るように、止んでいた。
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