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尋ね人と待ち狐(13/22)
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──何故…我はあんなことを言ったのだ…。
小僧と再会した日の夜、深く息を吐き出し、嘆息する。
小僧を喰らおうとしているのに、小僧の身を案じるような説教を、何故…。
あの少年は、どうしてこうも私の心を乱すのだ…。
今日、いきなり少年が訪れたときは驚いた。
聞くと、あの老女が倒れたため、冬が巡る前にこの地へ来たらしい。
"マフラーを早めに作り上げていてよかった"
"小僧は受けとったとき、どのような顔をするのだろう…楽しみだ"
…そんな事ばかり考えている己がいた。
喰らうために、仕方なく少年に付きあっているだけ。
それなのに……我の口からは、それと反するものばかり飛び出す。
我は──…。
思い悩む内に夜が明け、陽が輝きだした頃に、少年が再び山に訪れた。
「──白!」
「……達希…」
「あのね、ばーちゃんから聞いたんだ。今日、"りゅーせーぐん"が見れるんだって!お星様がいっぱい落ちてくるんだって!」
「…今日は晴れだ、よく見えるかもしれんな」
「そんでね、白。そのりゅーせーぐん、一緒に見ようよ!」
「無理だろう。見えるのは夜だぞ?」
「だいじょーぶ!こっそり抜けだしてくるからっ」
その夜、冗談だと思いつつ待ち受けていると、本当に少年が訪れてきた。
夜の我は、本来の妖狐の姿。
達希は我の獣の姿を見ると、目を輝かせて「この姿の白も大好きだよ」と言った。
……山の頂上で、二人で東の夜空を仰ぎ見る。
少年は我の編んだマフラーをし、頬と鼻を赤らめながら流星群をみていた。
「白……来年も、りゅーせいぐん、一緒に見ようね」
少年は我の白い毛に身を預け、満面の笑みを浮かべる。
そして、我の頬に口付けした。
あぁ……たまらなく息が苦しい…。
胸が焼けるように痛む。
ヒトの子よ……これ以上、我に近づかないでくれ。
我の心を乱さないでくれ……達希…。
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