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別れ・想い人に懸けるもの(2/16)
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我に"死"が訪れるのは……素顔をヒトに見られたときか、ヒトの子を喰らったとき。
そして、この山が死んだときのみ……。
「達希……一つ、約束してくれぬか」
「何?」
「お前が寿命でこの世を去るとき……そのときは、この山を売り払ってくれ」
「え……?」
「以前、お前の祖母が言っていたな。この山は元々切り拓かれる予定だったが、祖父が買い取り、それを止めたと」
達希が不安そうな表情で我の様子を窺いながら、首を縦に振る。
もう……後悔はない。己を愛してくれる人……達希に会えたのだから。
「お前のようなヒトの子に出会えてよかった…幸せだ。だからこそ、達希……お前を我の中で最後の人にしたい」
達希がこの山の領有権を手放したら、いつかこの山は切り拓かれ、山の精は死ぬだろう……我と共に。
ヒトへの憎しみも後悔もなく、安らかに逝ける…。
己の気持ちを、偽りなく打ち明ける。
聴き終えた達希は、少し悲しそうな目をしながら微笑んだ。
「……分かった。白がそう望むのなら、俺は叶える。でも、それまでは……一緒に幸せに過ごそう。約束だよ…?」
我の手をぎゅっと握りしめる、大きくて温かい達希の手のひら。
愛する者の目を見つめ、こくんと頷いた。
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