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別れ・想い人に懸けるもの(11/16)
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日が暮れる頃、病室の前でとーちゃんとかーちゃんが声をひそめて話をしていた。
けど、俺にはその会話がちゃんと聞こえていた。
「優香…落ちついて聞いてくれ。担当の医師から聞いた……達希の余命はあと一週間ほどらしい」
「……! 嘘だと言ってちょうだい……どうして…っ、どうして達希が……どうして達希なのよぉ…!」
「…優香……」
かーちゃん、とーちゃん……。
瞼を開き、暗い病室の天井を見上げる。
生まれた涙が、つー…と頬を流れ落ちた。
とうとう、俺は死ぬのか…大事な人達を悲しませて。
愛する人……白をずっと待たせたまま、死んでいくのか。
「……白……」
もう一度、君に会いたい。
"ただいま"を、言ってあげたい……。
……今夜、付き添いで俺の病室に一緒に泊まっていたのは、とーちゃんだった。
起こさないように気をつけながら、重い体に鞭を打って起きあがる。
久しぶりに床に足をつけて歩こうとする…が、がくんと体が床に崩れ落ちた。
…思っていたより酷いな。ちょっと動いただけなのに、息が苦しい…。
「…どこに行くんだ、達希」
「……!」
振り返ると、寝ていたはずのとーちゃんがじっと俺の事を見据えていた。…怒ってる。
「早くベッドに戻れ、達希」
「……嫌だ」
「また母さんを泣かせるつもりなのか…!」
「……っ、違う!」
「だったら大人しく…」
「──俺は!」
とーちゃんの言葉を遮り、声を張りあげた。
掠れた声で、想いを必死に伝える。
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