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「さてと、出来た」
ふふ、と笑った日下部が、どんぶりを2つ、カウンターの上に差し出した。
「あ、ありがとうございます。並べますね」
パッとソファから立ち上がった山岡が、カウンターの方に向かい、伸ばした手でどんぶりを取る。
ダイニングテーブルに並べたそれは、とても美味しそうな牛丼だ。
「これもいい?」
はい、と次にカウンターに出てきたのは、細かく切られた野菜に白い液体がからんだもの。
「何その顔」
「いえ、これ、何ですか?サラダ?」
「え?コールスローサラダ。知らない?」
不思議そうな顔をしてコールスローをテーブルに置いた山岡に、日下部が苦笑していた。
「へぇ。美味しそうです」
「そう?簡単だから。あ、あとこれな」
トンッと最後にカウンターに出てきたのは、具たっぷりの味噌汁だった。
「定食みたいですね」
「あ~?ありあわせで考えたらこうなった。山岡、卵いる?」
「いいえ」
「そ。俺もナシ派」
ふふ、と笑いながら、マグカップを持ってキッチンを回ってきた日下部。
最後にトンとそれをテーブルに置いた日下部が、ニコリと笑って山岡の椅子を引いた。
「あ、ありがとうございます」
相変わらずのエスコートに苦笑しながら椅子に座った山岡を、日下部がチラリと見つめた。
「ん?」
「いや…」
何だろう?と思いながらも、すでに山岡の意識は目の前の料理に向いてしまっている。
「食べるか」
ふっと笑いながら自分の席についた日下部に促され、山岡はさっそく箸を手に取った。
「いただきます」
「いただきます」
随分遅い夕食…というより、すでに夜食だが…をパクパクと食べ始めた山岡は、ようやく自分がお腹が空いていたことに気がついた。
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