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タクシーを降り、会社の近くのビジネスホテルに入った。
「一緒になんて住まなければ、欲張る事も無かったのかもしれないな…」
暫くしてなし崩し的に始まった二人暮らしは、それでも穏やかで、温かく、確かに幸せだった。
彼は優しかったし、ご飯も一緒に食べてくれて、寝室も一緒にしてくれて、喧嘩なんて勿論した事も無かった。
でも、一緒に暮らし始めて半年が経った頃、彼の服の衣替えを手伝っている時、押入れの奥に蓋の開いた小さな箱を見つけた。
そこに入っていたのは、数枚の写真と、指輪が入ったケース。
それは彼の別れた奥さんとの思い出だった。
デートに行った時の写真、どこかの部屋の中で顔を寄せ合った写真、二人の結婚式の写真、そしてケースの中の結婚指輪。
息が止まってしまう程の衝撃だった。
胸が苦しくて、痛くて、込み上げる何かを必死に堪える。
そして震える手でその箱を元の場所に戻した。
この不安を消して
早く、僕を抱き締めて
気付きたくないんだ
家を出てホテルに着いた時、一度だけ携帯を開くと彼からの着信が数件あった。
全く気付かなかったそれを無視して電源を落とす。
明日は仕事だ。
僕はベッドに横になると、一度大きく息を吐き目を閉じた。
眠いはずなのに、目を閉じると反対に頭が冴えて行く。
僕は泣いていた。
寂しいのは貴方だけじゃない
必要とされたい、愛し合いたい、僕はそれを求める事を許されなかったのだ
僕は、貴方の痛みを知った
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