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イン・ザ・ルーム 1
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「あっ……つぅ……はぁ…はぁ……。」
「うっ……ん、ぁああっ……!」
「あぅっ……くっ……はぁ……すごっ……。」
「……んっ……きつっ…い……くっ。」
「……そろそろ……はぁっ……うっ……あぁ……。」
「イ…ク……?……はぁはぁ……。」
橘さんが、いきなり俺の腰を引く。
薄暗い室内の、日の当たらない、かび臭いベッドの上。
ズルッとシーツの上を滑って、上半身を起こした橘さんに、俺の腰が密着する。
橘さんが動く度、ヌチャッと粘着質な音が響いて、
抜けそうになるのを堪えるように、俺の足が、かってに橘さんの腰に絡まる。
橘さんは自分の赤い唇を中指で撫でると、フッと笑って、
そのまま、大きく腰を引いて、思いっきり俺に突き立てる。
ズンッと内臓に響いて……。
奥へ、より奥へ。
深く、もっと深く……。
俺の声と、橘さんの息遣いと、汗と、匂いと……。
それらがどんどん遠くなって、
肌の当たる音が一際高く響くと、俺達の欲望が一気に吐き出される。
「んっ、んん、ぁっ……!」
「あ、あ、ぁああ……っ!」
一瞬体が硬直して、ぎゅっと下腹部がしびれて、徐々に体から力が抜けていく。
はぁはぁと、荒い息を吐き、肩を上下に動かす俺達。
体から力が抜け、でも息は荒くて、シーツの上にダラッと身を投げ出す俺。
俺から引き抜いて、体液まみれのソレをティッシュで拭く橘さん。
「……ゴム……付けて…って……。」
「生のが……気持ちいぃから。」
「知るか……お腹痛くなるんだって。」
俺もティッシュを取って自分の腹の上を拭く。
それをじっと見ながら、橘さんがだるそうに言う。
「先、シャワー浴びれば。」
「いいよ。橘さん、忙しいんだから、先浴びて。」
俺は、だるい体を少し動かして煙草に火を点ける。
橘さんは俺の煙草を見つめて、ゆっくりとベッドを下りる。
俺は煙草を吸い込み、目をつぶる。
煙草の煙が肺に入って、体中に浸透していく感触が心地いい。
しばらくして、シャワーの音が聞こえ、俺は煙草を灰皿に押し付けた。
いつからだろう。
こんな関係になったのは。
ただセックスするだけの関係。
欲望のまま、吐き出すだけ吐き出して、抱き合うこともしないで……。
快楽だけを求めるから、恋愛みたいに面倒なことが何もない。
ヤリたい時だけ会って、それ以外は何もなし。
そーゆー時には、ご飯すら一緒に食べやしない。
暗黙のルール。
だからきっと、バレる心配もかなり少ない。
ま、一緒にいるとこ見られても、なんとでも言い訳できるけど。
もちろん、この関係を知ってる人は誰もいない。
俺と橘さんだけの秘密の関係。
恋人ですら知らない、本当に二人だけの……。
カチャッ……。
橘さんがバスルームから出てきた。
腰にバスタオルを巻いただけの橘さんが、手早く服を着ていく。
「彼女、元気?」
俺が軽い口調で聞くと、橘さんはチラリとも見ないで、
「ああ、元気。」
そっけなく答える。
今度はシャツのボタンを溜めながら橘さんが聞く。
「そっちは?」
「こっちは……知ってるだろ。」
俺もそっけなく答える。
他に答えようもない。
「……順調に付き合えてるかって意味。」
橘さんがスラックスに足を入れて引き上げる。
「ああ、大丈夫。」
「そ。」
橘さんは軽く髪をかき上げ、撫でつける。
取引先でも噂になるほど、綺麗な二重といやらしい唇のイケメン。
イケメンが、グラビアみたいな顔をする。
「バレんなよ?」
……それはどういう意味?
俺達の関係がバレないようにってこと?
それとも、俺と武田が付き合ってるってことがバレないように?
俺が考えてると、橘さんは答えを待つことなく、上着を着、鞄を手にする。
「じゃ、明日、会社で。」
「ん。」
橘さんは振り向くことなく部屋を出て行く。
橘さんは俺の1こ上。
フロアも1こ上の企画開発部。
俺は原材料部で、必要な素材を買うバイヤー。
買う物を決めるのが立花さん達で、
俺らはそれをどこから調達するか考えて、買い付ける。
決める人と行動する人。
バスルームを出てから、一度も俺を見なかった橘さん。
ずっと見ていた俺。
考え方も、感じ方も、やり方も、やることも、全然違う俺達。
こういう関係がやっぱり楽で……。
俺はまた煙草に手を伸ばす。
火を点けようとすると、タイミングよく、携帯が鳴る。
「……もしもし。」
「あ、大沢?」
「うん。」
「今から会えない?」
「ん~、今日はちょっと疲れてる……。」
俺は口に咥えた煙草を取り、左手に持ち変える。
「……そっか。……明日は朝一で打ち合わせだったね。
……今日は許してあげるよ。」
「ん、わりぃ。」
「その代わり、キスして。」
「……電話で?」
「ん、電話で。」
武田が明るい声で笑う。
「できるか。そんなこと。」
「なに?恥ずかしいの?」
「……恥ずかしいだろ。普通……。」
俺は、手にしていた煙草をまた咥えて、カチッとライターで火を点ける。
「じゃ、愛してるって言ってよ。」
「……愛してる。隆人」
「あははは。それは言ってくれるんだ?俺も、愛してるよ。」
最後にチュッとリップ音がして電話が切れた。
俺は煙草を思いっきり吸い込んで、ゆっくり煙を吐き出す。
ああ、そう言えば、俺と橘さんはキスもしない。
それも、暗黙のルール。
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