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憧れの人 2
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「さて」
そう言うと、一貫してしなやかな身のこなしの岬が珍しくグラスをかちゃんと言わせた。
「俺先にシャワーいい?それとも一緒にする?」
「………………お先にどうぞ」
絞り出すようにそう言った岬の顔は歪んでいた。
怒っているのか、悔しいのか、悲しいのかーー顔が整いすぎているのと潔癖な性格とで、感情は読めない。
何か堪えているらしいのは分かるんだが。
「もし逃げたりしたら、あの話は無しな」
「………………承知しています」
逃げませんとは、言わないんだな。
一度飲んだ取引を、逃げる形で反故にするのはプライドの高い岬には耐えられないだろう。
だが、遵守は辱めと同義だ。
そんなことをされるなら自分で上に掛け合うなりなんなりした方がいいと、分かってもいそうなものだが。
ーー考えても仕方がない。
岬が大人しく待っていてくれるのを祈ることにしよう。
熱いシャワーを浴びながら、初めて関係を持った日のことを考えていた。
ただなんとなく入ったバーで、岬は正体無くすほど酔っ払っていてーーおそらく何か盛られてたんだろうがーー連れの目を盗んで店から引っ張り出した。
岬の家なんか知らないから俺の部屋に運んで横にさせて。
その辺までは理性を保ってたはずだ。
正直ここまで綺麗だと男だろうが女だろうが意識せずにはいられない。が、相手は部下だ、しかもその容姿のせいでさんざん悩んでいる、絶対に何事もあってはいけない。意識していることを気取られてすらいけない。
それは俺が正しい人間であるためではなくてーーーーそんな目で見ていることが知れたら、恐らく無条件で嫌われてしまうから。
そうやって、自分のことすらだまくらかして蓋をしてたのにーーー
誰と間違えたかあの小悪魔、とろっとろの目で誘惑しやがった。
折り目正しい敬語しか使わないあの唇が、薄くていつもすらりと引かれている唇が、弛んで「いかないで」とか言いやがった。
「あれは落ちるよなあ………」
もう、無茶苦茶に抱いてやった。
男の体なんかどうしたらいいかさっぱり分かんなかったけど、それはもういやらしく耽美に教えられて。
まさか手入れでもしてんのかってとこまで綺麗で綺麗で。
俺は完全に狂わされた、やっと蓋の正体を自覚した、もう我慢なんぞしないと決めた。
そして、次のチャンスは逃さない、とも。
「……うっし」
俺も俺で全身綺麗に洗い終えて部屋に戻ると、岬はそこにいた。
相も変わらずきれいな姿勢で座っているが、どこか所在なさげだ。
ちらりと俺の方を見てまた目をそらし、何も言わない。
「シャワーどうぞ。俺はそのままでもいいよ」
「……………お借りします」
少し肩をすくめ、岬を見送る。
年甲斐もなく、もう勃ちそうだーーーさすがに助平オヤジだな。
これもまた年甲斐もなくそわそわ待っていると、岬が戻ってくるのは意外と早かった。
嫌なことはさっさと済ませよう、みたいなことだろうか。
ソファから立ち上がっておいでおいでをし、寝室に向かうと岬は素直についてくる。
からくり人形のように従順に、俺の隣に腰掛けた。
「……ずいぶん物分り良いな。岬にそういうイメージ無かった」
「………………」
「本当にいいのか?」
「……何を今更」
「まあなあ……」
肩から腕を撫で下ろし、脇腹から乳首を掠めて首元へ。
前のときは酔っ払ってるからかと思ったが、そもそも感度が良いらしい。
下手したらぴくりとも感じてもらえないかもなとか思ってたけど、これは嬉しい誤算だ。
「本当に白いな。見ろよこの色の差」
「あの……、灯りは、」
「消さないよ」
全部見せてもらう。
口元がにやけてしまうのを抑えられないまま俺は、岬をベッドに押し倒した。
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