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憧れの人 3
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「…………っ部長、あの……やはり………」
「なに…………」
耳の奥が、潮騒のようにさざめいて煩い。
自分の血潮の音が聞こえるほど興奮していて、大人らしくしっとりやらしいセックスがしたいのに叶わずがっついて岬の耳やら唇やら舐めまくっていた。
その手が付けられない昂りも、戸惑ったような岬の声にいとも容易く御されてしまう。
首筋から顔を上げ、濡れた口元を拭いながら視線を合わせると、窘められて少々苛立っていた気持ちもまたすんなりと落ち着いた。
ーーなんて顔してるんだ。
「どうした、痛かったか!?」
「いえっ、そんなことは」
慌てたように否定されて一先ずは安心したが、とりあえず何でもかんでも隠そうとする岬には珍しい、手放しに困惑したような悲しそうな表情は改善しない。
慰めたい、けど。
恐らくその原因は俺なのだろうからーーー
慰めたいなら服を着ろ、か。
「……やっぱ嫌か?」
困ったように眉根を寄せた岬の視線が斜め下に逃げる。
くそ、残念過ぎる。
幼稚園児にでもなった気分だ、もっと遊びたいのに、帰るわよと言われて駄々をこねるような。
こんな純粋な好意と欲求、それが叶わない落胆は、四半世紀は感じていない。
ーーが。
三十代も半ばを過ぎれば、地団駄踏んで我を通すわけにもいくまい…………。
似合うのは疲れたため息だ。そのくらいは許してもらおう。
「ーー分かった、やめよう。悪かったな」
「いえっ!あの………」
「心配するな。対応はちゃんとしとくから」
ずり落ちてしまったタオルを拾い上げて腰元に掛けるけど、やはり年甲斐もなく、へこんだくせに戻ってくれない。
無駄にでかいからかえって滑稽だな。
(くそ、かっこわる)
「タクシー呼んでくる」
「部長!待って……ください、」
「んー……?」
冷たく見えるかもしれないけどやっぱりまだ振り返られない。
タオルを留めてるふりして顔だけ振り返ると、岬は泣き出しそうに顔を歪めていた。
「ーーーー?」
「………………っ」
もう一度、ため息。
半泣きの顔も綺麗だが、それを目の前にして、どうにかできるのにできないって辛いぞ。
「………どうしたの」
呆れたような声になってしまい、少し怯えたような顔が弾かれたように俺を見上げる。
少し硬くやさぐれてた心中がまた柔らかくなった。
なんでそんな、子供みたいな……………
(可愛い顔すんだよもぉ…………)
自分の眉も頬もだらりと弛緩したのが見ずとも分かる。
なぜか岬の方が分かっていないらしくまた迷子みたいなその顔を悲痛に俯けた。
俺のしたことって、やっぱそこまでひどいことだったか。
まあ、それはそうか。
「岬ーーー」
「部長っ、あの…………ーーいかないで………」
「…………………へ」
「……ください………」
状況が理解できずに俺がぱちくりして、やはり自分で分かるほど滑稽な顔してる間にもやはり岬は気づかないように更に泣きそうな顔をした。
「な……なに?どうした?お腹痛い?」
こんなアホなこと言ってしまってもただ必死に首を振って、ーーあああ、本当に泣いてしまった。
「ええっ!なに、ごめん岬っ、ごめんごめん悪かった!」
さめざめと肩を落としてしまった岬の横に慌てて戻り、頭を撫でてやる。
それこそ子供みたいによしよしと抱き寄せてやりたいけど、微妙なラインか。
まだ半勃ちしてるし。情けないーー、と思っていたら、岬が、がばりと抱きついてきた。
(はい完勃ちー…………)
普段しっかりしてると、こうなるタイプは多いな。
一も二もなく幼児返りしてしまって、誰かれ構わず縋ってしまうって言う。
まさか岬がそれとは思わなかった、そこらの女子とは比にならない危ない癖だと思う、がーーまあそもそも人前でなんか泣かないか、岬は。
それを泣かすんだからやっぱり人でなしだよな俺は……。
本当に申し訳ないとは思うが、泣いてる時って話しかけられると余計辛かったりするんだよな。
なんだか泣き付かれやすいタイプのようで、俺は身に沁みてそれを知っている。やっぱりまだちょっと勃ってるし。
しかしやはり、岬は自分を立て直すのも早かった。
ぐすぐすは言いつつも言葉を口にしようとする。
ティッシュ箱を近くにおいてやると、会釈しながらそれを抜き取った。
「申し訳ありません、取り乱して………」
「お……おう、いや、謝るな頼むから………」
言うと、岬は小さく首を振った。
「ど、どこから話していい、のか」
「……?何も必要ないぞ。俺が弱みにつけ込むようなことして悪かった、それだけだ」
また岬が首を振る。
「……違うんです、それは……、私が拒絶すればいいだけの、話でした」
「んー、まあなあ……」
確かにそこは不思議ではあったが。
やっと泣き止んだ顔をまたくしゃりと歪めて、岬はぐっと俯く。
「部長は、わ、私を……淫乱だ、とか、思ってらっしゃいますか」
「…………………。……………んん!!!?」
俯いたまま真っ赤になってしまった岬を、俺は思わず下から覗き込んだ。
一体どんな顔してそんな冗談を言っているんだ。
「えっ。えっ?全っ然思ってねえよ。えっ何の話?」
完全にとっ散らかってしまうと岬は少し顔を上げたが、やはり半泣きの顔だった。
「ーーあの、以前……」
「ああ、うん……まああの時はお前酔っ払ってたし。エロくて可愛いな、としか思わなかったけど。素面でもあんな感じなの?」
「いっ、いや……あまり覚えていなくて」
「ああ、そうだったっけ……まあでも素面であれでも俺はアリだなあ……っていうかむしろギャップたまらんみたいな感じ」
「………………」
また岬は俯いてしまったが、今度はなんと言うかーー思春期の女の子のような感じだ。
「そうですか………」
「……?うん」
「ーーもし、はしたないやつと思われていたらどうしようと…………そう思うと耐えられなくて、すみません、でした」
「いや、だからお前が謝ることはないんだって。大丈夫もう何もしないから」
なんなら会社も辞めようかくらいのことをしでかしてしまっている。
本心からそう思って言うと、弾かれたように岬が顔を上げた。
「……違うんです!私は本当は、……う、嬉しくて。」
「………………へ?」
「この機会を、逃したくないと……思っているのに、嬉々としていたら軽蔑されてしまうと、それに………」
「……………えぇ?」
「部長も決して、私自身のことを良しと思っておられるわけではない、から……そう思うと、つ、辛くて」
「…………………………………えぇ……………?」
またひくひくとしゃくり上げてしまった岬の背中をぽんぽん叩いてやりながら、俺は呆けて考えていた。
「……………岬、もしかして俺のこと好きなの?」
肩にガンガン頭が当たる勢いで、岬が頷く。嘘だろ。
ーー俺、どうしたらいいんだ。
俺も俺で正直になってしまって良いのか。
「ならなんであんな冷たかったんだよ…………」
「ーー溢れそうだったんです」
「おっふ…………」
変な声出た。
うちの息子は、さっきから勃ったり伏せたり忙しい。当然今は物凄い胸を張っている。
「ーー実は前の……あの日は、朝になるまで部長ご本人だとは気づいておらず………恐らく、自覚なくその……乱れてしまったんだろうと、思うとたまらなくて……」
(……可愛い)
「あの後から部長が誘ってくれるようになっても、きっとそういう関係としてなんだろうと、私自身を好きになってくれているわけではないと……思っていました。それなのに自分ばかり本気になのは辛くてーー」
(……可愛い)
「……………部長?」
「んぇっ?」
「あの……何を、考えてらっしゃいますか」
「えっ。可愛いなって」
「えっ」
さすがに馬鹿過ぎるリアクションをしてしまった。
岬はこんな懸命に話しているのに。
ひとつ咳払いをして、とりあえず先に気になったことを聞くことにする。
「……なんか、俺相手でなきゃすごいエロいみたいな言い方してたけど、どうして?」
「あ………」
弁の立つ岬には珍しく、どうやら口を滑らしたことのようだ。
気まずげに視線を逃がすが、その先に回り込んで顔を覗き込んでやった。
慌てたようにまた顔を背けるが、どうもそのーー、ときめいているように見えるのは俺の目がおかしいのか?
「だって……っそうして……激しく抱かれて乱れることでしか、発散できなかった……手近で相手を探すわけにも、何度も会うわけにもいかないから、余計に……」
「溜まってた?」
「う……………」
また俯いてしまった岬の頭を撫でてやりながら、岬のその生活に思いを馳せる。
確かに、馴染みを作ったり住所がばれるような近場で探したりしたら岬は面倒なことになるだろうな。
俺みたいに、狂われて執着されてしまう。
「そうか……」
「………はい」
「あと」
「まだ何か………っ」
泣き出しそうな顔で抗議する岬が可愛すぎて、声を立てて笑ってしまった。
「うん、もう少し。けど、始めながらでもいい?俺ちょっと、堪え性無いのね」
「へ………」
きょとんとした岬の視線を下半身に誘導すると、面白いほど目を剥いていた。それはもうぎょっと音がするくらいに。
本当に気づいてなかったのか?
可笑しくてまた笑ってしまいながら岬の肩を押すと、やや当惑したように俺の肘を押さえるもののそのままベッドに背を付けた。
「本人だとは思わなかった、ってどういうこと?」
「………………!」
これも失言だったんだな。
「……………どういうこと?」
「あ…………っ」
重ねて問うて、指の背で脇腹をなぞると岬は震えながら体を縮める。
なんなんだ、この感度………。
「岬、」
「っ………!部長に………!似てる相手をっ、探して、いつも」
「……………」
「部長を……、っは、想像、して」
「……………」
「いてーー………」
「岬……」
「っはい、」
「……もう解してもいい?そんな可愛いこと言われたらもう出そうだ」
「ん……………!」
右膝を大きく開かせて中指を埋め込むと、驚いたように硬直した後すぐに柔らかく絡みつき、まるで飲み込まれていくみたいだ。
腰が浮くほど仰け反りながら、岬は細く声を漏らす。
「んん…………っ!」
取り憑かれたようにゆっくり抜き挿しを続け、俺は岬の痴態に夢中。
女の子かってくらい感じてるらしい震える体も、音も感触も声ももうーーまるで麻薬だ。
「凄いな……、指、吸われてるみたいだ」
「や………」
「岬、舐めてもいいか?」
「へっ………!!?」
喉がひっくり返ったような声は黙殺して指を抜き、その音と鋭い嬌声を堪能しながら思い切り腿を上げてやる。
怖がっているように収縮したそこに唇を付けるとまた泣き声みたいな喘ぎが漏れた。
「や……っ部長、ダメ………」
「ん…………?」
「だめっ、だめ、です………っ、ぁ……」
ちらちら擽り続けてやると、岬は声を我慢できなくなったらしい。
小さくも可愛くアンアン鳴かれちゃって、俺は最早真顔だ。
どうしたらいいか分からんほど可愛い。
これを隠して、あんな冷たい顔やつれない仕草をしてたのかと思うと、いじらしいわ勿体ないわで爆発しそうだ。
ひくひく震えてるそこから塔渡りまで舌先でなぞって顔を離すと、大きく仰け反って声を上げ、岬はくたりと体を弛緩させる。
俺はもう何も言えず、今か今かと臨戦態勢を維持してた愚息の先端を押し当てた。
たまらん。
「ぶ、ぶちょ………っ待って、まってください……」
「んー……?」
「あっ!まっ待ってって、んぅっ」
ここでストップ掛けるって凄いな。
鎌首まで飲み込ませ、その括れに岬がきっちりと吸い付くのを見届けてから顔を上げる。
「……良い子だね」
「………………っ!!」
泣き出しそうに、でも感激したように岬は眉を下げて真っ赤になった。
この顔を見たら、俺に惚れてるらしいのはもう疑いようがない。
可愛すぎるな……。
「ーーで?」
「ふあ……あの、部長はーーどう、思ってらっしゃいますか……」
「ん?」
「あ……っ、揺らさないで、くださぃ……」
「凄いな、先っぽだけでもこんな気持ちい」
「う………!部長っ、」
岬の泣き顔が可愛くていじめすぎたらしい。
その表情からときめきのようなものが消えて、本格的に悲しげになってしまう。
「部長ーーー………」
泣き顔も可愛いが。
そんなに思い詰めて、赤の他人にまで俺を重ねていたんならーーそろそろ笑ってもらわなければ。
そうしてやれるのか、と思うと自分が少し誇らしい。
「それは、一晩かけて分からせてやろう」
「………………!」
ゆっくり奥まで押し入って、俺は岬の上に体を合わせた。
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