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暗黙の齟齬 2
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「いらっしゃい!」
「おう」
「こんばんーーえ?」
「え?」
進藤さんから、珍しいことにメールではなく電話が来た。
それだけで嬉しくて嬉しくて、うっかり「たまには飯でも食っていきませんか」なんて言ってしまった俺に進藤さんは「おー」なんて言って、また嬉しくてウキウキで出迎えたらば。
「ーーいやいや男じゃん!!」
進藤さんの後ろにいた男はそう言った。
ーー誰?
互いにそう思って進藤さんを見つめるけど、俺宛ての返事はなかった。
「あれ?女だっつったっけ」
「言ってないけど!普通そう思うでしょ!!!」
「やめとく?」
「いやいやいやいや待て待て待て待て」
「…………………」
置いてきぼりにされる家主の俺を押しのけて、進藤さんは部屋に上がりながら背後の男を振り返る。
「どうすんの?面白ぇには面白ぇぞ」
「……え、いーの?なんなの?」
何の話をしてるのか、この人は誰なのか、やっぱり一人だけなんにも分からない俺の部屋に、結局はその人も入ってきた。
「……………あの?」
俺が飯作るって言ったから、飲み仲間でも連れてきたんだろうか。
もう一度進藤さんに万感の疑問を込めて呼びかけてみると、珍しいことに進藤さんはうざがりもせず少し歪に笑ってみせた。
「今日こいつも混ざっから」
「えっ」
「えっ」
ーー混ざる。
それはどういう………
「おいちょっと待て本人知らねえのかよ!?」
「あ?うん」
「えぇ〜、ちょっと進藤お前ぇ〜……」
「んだから、やめとくか?って」
「いやいやいやいや……」
「結局やりたいんじゃねーか」
ーーそのやりとりをぼんやり聞きながら、本当にそういう意味なのか、信じたくなくて、でも進藤さんなら本当になんの躊躇いもなく思いつきそうで、俺はただ突っ立っていた。
その俺を、刺すみたいに進藤さんが振り返る。
「脱げ」
突きつけられた回答に体がびくつくと、ちょうどそれをもう一人の知らない人に見咎められた。
なんとなく申し訳なさそうな顔はしてるけど興味も抑えられないような、偽善っぽい顔。
その顔がはたと目を見開く。
「ーーあれ?5階の会社の人じゃありません?」
「へ………」
「たまにエレベーターで一緒になる……、っていうか名刺も交換してる気がする」
「………………」
進藤さんと同じ会社なら、きっとそうだろう。
俺はまだ固まっていて、進藤さんはどうでもよさそうで、その人は泡食って「俺神田です」なんて言っている。
俺もどうでもいい。
「お前さあ……!」
「厄介ごと起こしたら色々ぶち撒けるって言ってあるから大丈夫だよ」
「そういう問題かよ!」
「だーかーらー嫌ならやめとけっつってんのに」
「……………………」
またその人は言葉を飲んだ。
進藤さんはさっさとネクタイ外してジャケットを脱いで、まだ呆気にとられてる俺の手を強く引いて跪かせる。
「しゃぶれ」
「………………」
「……マジかよ」
俺はまだ我に返れないまま条件反射みたいに進藤さんの言いつけに従って、ぼんやりと知らない声を聞いていた。
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