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第一章~中学3年生・夏~
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*Side久夜
「久夜!」
「おう、お疲れ。」
「悪いな、忙しいのに。」
「ええんよ。ちょっとした気分転換やし。」
春に涼真と喧嘩して。春期大会の結果は散々。
夏になってやっと結果が出て。
それでもまだ、胸のモヤモヤはどこにも消えてはくれんかった。
高校は決めてる。
高藤一本。推薦も来た。
父さんがでた高校。
八尋さんが通ってる高校。
...同じところへ行く。
「そっか。良かった。どうよ?陸上の大会とか見る機会ないだろ?」
「せやね。紅野は走らんの?」
「俺は長距離だから、もう少し。」
「ふーん。あ、あそこで走ってた奴、早かった。」
同級生で仲のいい紅野に誘われて、陸上の大会を見に来た。
大きい競技場で違う種類の競技が並行で行われてるんが、ちょっと変な感じやった。
アップをしてくると言って紅野がいなくなった後、トラックでは100mが始まった。
そこで走ってた一人につい目がいったんやけど…早かったな。
「誰?」
「あそこの…手足長い、あそこで誰かと喋っとる。」
「あー、氷野彼方だよ。春の大会も全国いったレベルだからね。」
「氷野彼方……あの喋っとる相手は?知っとる?」
「誰だろ?でも氷野と同じ学校だったはずだよ。気になる?」
「いや、綺麗にはしっとったから……」
「そっか。」
追い付くことの出来ない距離を、懸命に埋めるように走っていた。
その姿を、俺は忘れることが出来なかった。
名前も知らない、一人の陸上選手を。
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