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第一章~高校2年生・春~10
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授業は滞りなく進んでいった。
終始やりづらそうにしてたセンセには本当申し訳なかったと反省。
6時間目も梁瀬は戻ってくることはなくて、お通夜のような雰囲気のまま授業は終わった。
さすがに部活にはいかなあかんから、氷野と梁瀬の荷物をまとめて、1人保健室に向かう。
「失礼しまーす」
小さく呟いて中に入る。
養護教諭はいなくて、一番手前のベッドに梁瀬は寝ていた。
近づくと、床にアイシングが落ちていて、梁瀬の頬には涙の跡があった。
「梁瀬……」
涙の跡をなぞる。
泣かせない、そう決めたんに。
全然上手くいかへん…
「んっ…」
「梁瀬、目ぇ覚ました?」
「…っ!!」
「………怖がらせてごめん。鞄持ってきたから部活行こーか。」
目を覚まして、梁瀬に手を伸ばした瞬間に梁瀬が一瞬怯えた顔をした。
自分で思ってた以上に梁瀬を傷つけてしまったらしい。
当たり前か、と自分を殴りたくなった。
俺は、今、上手く笑えてるやろか。
また梁瀬を怖がらせてないやろか。
不安は募るばかりで、消えてくれない。
梁瀬が笑ってくれること。
俺にとって一番はそれやのに。
「あ…久夜っ!」
「歩ける?部活休むんもありやと思うけど。」
「だい、じょうぶ……ねぇ「世那先輩も待っとるよ。」
笑って。
お前が笑ってくれるならそれだけでいい。
それだけが俺の願い。
他はどうなったっていい。
梁瀬、俺はやっぱりまだお前に本当の事なんて言いたくない。
2人分の鞄を持って歩く俺の一歩後ろを梁瀬がついてくる。
そのままの状態で体育館に入ってった俺らに、一番驚いてたのは世那先輩だった。
……あとで言わなあかんか。
「久夜~、今日元気なくね?そう言えば紅野が何か言ってたな~」
「脳内お花畑は黙っとれ。」
「カリカリしてんなぁ。今の久夜になら1on1勝てそう。」
「はぁ?」
小学校のミニバスから一緒の仁は俺の凄みにもケラケラ笑ってる。
相変わらず…変わらんなぁ。
「久夜はさー、本当廣川好きだよねー」
「当たり前やん。」
「うん。そうなんだろうね。あの時の久夜を引き戻したのは紛れもなく彼なんだから。
でも、それと今は別なんじゃないの?」
ボールを何回かついた仁はゆっくりとモーションに入って、ボールを放った。
放物線を描いてボールは遮られることなくゴールへ吸い込まれていく。
脳内お花畑のなくせにこーゆーとこ腹立つわ。
これで俺よりも頭いいんもほんま腹立つ。
「…せやね。でもお前にはまだ負けへんよ。」
「やる気になった?でも勝手なことすると世那先輩に怒られるからな~それは嫌だな。」
「仁。」
「ん?」
「さんきゅーな。あと紅野にも伝えといて。」
違うグループに属しても、仲がいいことに変わりはない。
そんな関係を俺にくれてるんは、紛れもなく仁と紅野達で。
久我たち含め、周りにはほんま恵まれたんやろな。
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