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第一章~高校2年生・春~12
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「今日はこれで終わりにするよ。
明日からは仮入部とかもあるからちょっとバタバタすると思うけど、いつも通りで大丈夫だから。
それじゃお疲れ様でした!」
「「「「っかれしたーっ!!」」」」
部活が終わって、帰り道を無言で歩く。
ほんまデジャヴやなぁ…
あんときも俺の方が梁瀬に迷惑かけた気がする。
言わんほうがいいって頭では分かってても、抑えることが出来んくて、結局言ってしまった告白を受け入れてくれたんは梁瀬やった。
…今でも時々思う。
梁瀬を幸せにするんは俺であってほしい。
俺が梁瀬を幸せにしたい。
梁瀬の笑顔が見たい。
梁瀬が笑うそん時、隣にいるのは俺がいい。
せやけど、梁瀬はそれで幸せなんやろか…?
氷野の方が理解があって、昔から知り合いで、梁瀬は氷野と付き合ってた方がよかったんやないかって。
自信がない。不甲斐ない自分が、ほんまに嫌い。
お互い無言のまま、電車に乗って、歩いて、気が付けば俺ん家につく。
もう何度も梁瀬と帰ってきたこの場所が、今日はいつもと違う風に映る。
「……ただいま。」
「お邪魔します。」
「おかえり、久夜。梁瀬もおかえり。今日はご飯食べてくんだよね?」
「あ、はい。ごめんなさい。」
「なんで謝る?ご飯は多い方がいいだろ?ってことで、千もいるけどいいか?」
「はい構いません!千先輩も来てたんですね。」
リビングから顔をだした兄貴は、いつもより笑顔で俺たちを迎えてくれた。
千先輩を呼んだんは、多分めっちゃ気つかってくれたんやろう。
千先輩にも後で謝らな。
「もう少しでご飯できるから、梁瀬は千の相手してて。」
「あ、はい。」
何気なく梁瀬をリビングへ誘導してく兄貴に、俺はどうすることもなく、玄関から動けずにいた。
「久夜。ご飯までは上にいな。梁瀬のことは大丈夫だから。」
「すんません。俺…」
「謝るな。兄弟なんだから、そんぐらい甘えろって。むしろお前はいつも一人でどうにかしようとしすぎ。」
ポンと頭を撫でられて、思わず固まってしまう。
いつも俺が梁瀬にする側だったから、されることなんてなくて。
…こんなに安心できるもんなんや。知らんかった。
「お前の荒れてた時のこと、…俺夕那さんに聞いたことあるんだ。」
「知ってたん、ですか?」
なんや、母さんにもばれてたん。
結構隠してたつもりやったんやけどなぁ…
「ちょっとだけ。俺はやっぱりそうゆうのは久夜から聞きたいし、いくら兄弟っつても距離感とかは大事だろ?
そうゆうの言い合えるようになればそれはそれでいいんだろうけど、焦る必要もない。
お前はお前らしく、でいいんだよ。
どうせお前の一番はどうやったって梁瀬なんだから。」
「…そう、ですね。」
「泣くなよ。」
「ありがとうございます…、八尋さんが兄貴でほんまよかった。」
人との距離感…誰よりも気にしてたのは兄貴やった。
一緒に暮らし始めて一年が経つ。
高校の部活では先輩で、家では兄ちゃんで。
絶対ギクシャクするもんやと思ってた。
けど、そうならなかったのは、兄貴がめちゃくちゃ気を使ってくれてたから、って最近になって気づいた。
それは紛れもなく八尋さんの優しさ。
最強の兄貴やって思った…
憧れた人が、八尋さんでよかったって、今はまだ言われへんけど、いつだって思っとる。
「俺もお前が弟で良かったよ。」
兄貴にぎゅっと抱きしめられたんは初めてで、一瞬びっくりしたけど、その腕の中は驚くぐらい安心できた。
大丈夫、って言ってくれてる気がした。
「…あんがと、兄貴。ご飯できたら呼んでください。」
靴を脱いで、二階に上がる。
大丈夫、大丈夫。
貫ける、梁瀬思う気持ちだけは。
曲げたりしないって、決めたんや。
「あぁ…俺はさ、久夜。少し後悔してる。あの時期にお前の傍にいれなかったこと。
それでも、まっすぐ追ってきてくれて嬉しかったよ。」
*Side 久夜 END
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