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突き立てた爪痕の数
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嫌いだよ、と呟いてみる。
情事の最中、しーちゃんの背中に爪を突き立てるのが好きだ。そうして眉を寄せたり歯を食いしばったりして顔が歪む瞬間を見るのはもっと好きだ。あの端麗な顔をぐちゃぐちゃにしてやりたいと思うのは人間としてごく当たり前の思考だと思う。
「当たり前じゃねーよ」
てかもう出ねぇ。げんなりとした様子でベッドに横たわっているしーちゃんは煙草を吸う気力すらないらしい。久々に会ってエキサイトした結果がこれだ。歳なのかな。って言おうとしたけど乱暴に犯されそうだからやめた。口は災いのもと、ってね。
「え、そうなの?」
「どう考えても沸いてんだろうが。てか舐めんな」
背中に刻まれた僕の爪痕。愛しさと憎らしさを混ぜて刻印したそれを、それこそしーちゃんを咥えるときくらい丁寧に舐め上げる。ぴちゃぴちゃと音を立て、ときおり肩に噛みついてやれば、しーちゃんは堪らないというように身体を震わせた。僕は背後から手を伸ばして、再び大きくなったしーちゃんを掴む。
「あれ? どしたのココ、まだまだ元気じゃんね?」
「っるせ……」
「背中舐められるだけで感じたなんて、しーちゃんてばやらしー」
「ンっ」
正直なところ、体力を使い果たして弱ってるしーちゃんにはかなりソソられる。
普段は僕が下の方が多いけれど、それは年上のしーちゃんに遠慮してのことだし。僕って体力的にも性質的にもタチの方が合ってるんだよね。実際、今までそうしてきたワケだし。
こんなに扇情的な姿を見せられている側からしたら、誘ってるとしか思えないよね。
自分がこれからしようとしている行為の正当化はほどほどにして、そろそろしーちゃんを可愛いがることに専念しようと思う。
「さっきまでコレが僕の中に入ってたんだよねえ……」
「触んな……ッ!」
「あ、またおっきくなった」
まだ出そうじゃん。くすくすと笑みを零せば、途端にしーちゃんの耳が赤く色付く。やらしーだけじゃなくて可愛いとかなんなの。ドクリ、性欲と衝動が込み上げる。ピクピクと震える耳に口付けを落としてから、そっとしーちゃんの上に覆い被さった。
「しーちゃん、先っぽだけ入れさせて」
「はっ?! ――んむっ!?」
強引に口付けして反論を消去。もちろん拒否権はあるけれど、行使はさせないよ、なんてね。だって先っぽだけで済ませる気は毛頭無いから。
僕の下で羞恥と快楽に苛まれながら喘ぐしーちゃんは、それはそれは可愛かった。可愛すぎて大量に中出ししちゃったときにはコロスなんて物騒な言葉が聞こえた気もするけど後悔はしていない。1時間前より更にぐったりしているしーちゃんの隣に清々しい気分で横たわる。と、鋭い眼光が飛んできた。
「コロス。とりあえずコロス」
「あははっ」
三度コロスと言われても可愛いなあとしか思えない自分の思考に苦笑。しーちゃんが可愛いのがイケないんだ、年上の、とっくに成人した男のくせに。
唐突にしーちゃんが僕を見つめるから少しどきりとした。落ち着いたと思っていた下半身もそれに呼応する。若いって大変。
「どしたの?」
しーちゃんの額に張り付いた髪の毛を指先で払ってやる。と、近付けた腕ごと掴まれてしまった。あ、と思った瞬間には呼吸が出来なくなる。ヌメヌメとした舌が乱雑に絡まってひどく気持ちがいい。抗体や粘液の交換ってだけじゃないなにかを感じてしまうくらいには、僕はしーちゃんとのキスが好きだった。
背中にしーちゃんの手が回ったのが分かった。あまり長くない爪が僕の皮膚を柔く引っ掻く。くすぐったい。思い切り突き立てられる。甘い痛みを感じて脳髄が痺れた。きつく目を閉じて去り行く余韻に浸る。どちらともなく唇を離せば、銀糸が惜しむように二人を繋げた。
もう一度、しーちゃんが僕の背中に爪を食い込ませる。痛いよ、と言えばしーちゃんは妖艶に笑ってみせた。
「確かに好きな奴の顔を歪ませるのは楽しいかもな」
「うっわ、なにその性格が破滅した発言」
「お互い様だろうが」
「しーちゃんと一緒にされるのはなんか不服ー」
「シメんぞ」
「ぎゃあー」
しーちゃんの背中に爪を立てるのが好きだ。しーちゃんの綺麗な顔を歪ませるのも好きだ。ベッドの上でふざけあうのも、軽いキスを何度も交わしたりするのも、ずっとずっと抱き合っているのも好きだ。しーちゃんが好きだ。
だから僕は何度だって、嫌いだよ、と呟いてみる。
「俺は好きだけど?」
自信に満ち溢れた表情で、声で、仕草で、僕を満たしてくれるこの人が傍にいる限り。
(了)
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