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会えることになった日曜日
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「あ、メール忘れてた」
あれから、霊安寺の仕事をして、片付いてから怪しい場所を調査しに行って。必要があれば浄化とか、色々して。
霊安寺に戻って寝たのが午前二時。今は午前十時。きっちり寝たから、昨日の疲れはすっきりとなくなっている。
で、今から帰ろうと考えて、祐也へ会いに行けるから、住所教えて欲しいとメールしていたことを思い出した。
メールしてから一晩経って思い出すとか、どうなんだ。時間にしたら、二十四時間近く放置してた。
車に乗り込んで、エンジンをかけたまま、メールを見る。
住所とともに、近くの駅とかで待ち合わせでも大丈夫だと入って来ていた。
そういえば、祐也のマンションには、駐車場がないかもしれない。そうしたら、近場のコインパーキングだな。
祐也の家は学校を挟んで家とは反対方向にあるから、家に一旦帰るのはやっぱりやめることにした。
正兄には、メールで知らせたし、終わったのなら自由にして良いって言われたから、好きにすることにして。
祐也のマンションには駐車場ない?とメールする。
さすがに放置し過ぎたからか、すぐにメールが返ってきた。
曰く、客用駐車場は勝手に使って問題ないらしく、駐車場はあるとのこと。
で、あとは車持ってるのか?!と驚かれた。まぁ、そこは後から説明することにして、三時間くらいかかるから、着いたらまたメールする。とメールを切り上げる。ナビに祐也の家をインプットしてる時に、その祐也からのメール。気を付けてと。
兄弟や仲間以外でこうやってメールのやりとりするのも、何気に初めてなのである。
メールをし続けたら、いつまで経っても車を発進できないから、俺からは返さずに車を走らせることにした。
住職は、運転しながらでもこれなら食べれるだろ、とおにぎりを三個くれた。
朝ご飯としてはちょっと遅めになるけれど、やっぱりお腹は減ってるので、ありがたくいただいて。取り出しやすいように助手席に置いてある。
なんやかんやと、住職には世話になりっぱなしだな、と思う。
昨日の相談も……。
思い出して、運転しながら一人で赤面してしまった。
あんな風に考えるなんて、思い付きもしなかったから、住職には感謝しかない。
考えてみたら、簡単なことだったのにな、と思う。
祐也には、触られても嫌じゃなかったんだ。それがもう、答えだった。
祐也に、なんて伝えれば良いんだろうか。
否、直球に言えば良いのはわかってるんだけど。俺、切り出せるかな。どうだろう。
こんな悩みを持つなんて、ちょっと前の自分じゃ考えられない。
でも多分祐也は、話したいことがあるって言えば、前みたいにしっかり聞いてくれると思うんだ。
だから、大丈夫だ。何だかよくわからないままに、確信を持ってそんな風に思ってた。
車の道順は、途中までは家から来た道と変わらないけど、何分初めて車で来たから、来た時と帰る時では、景色が違って見える不思議を味わった。
カーナビがあって良かったなと、改めて思う。
※
三時間くらい走って、秀は祐也の住むマンションに辿り着いた。
慣れない運転だからと、コンビニで少しの休憩はしたものの、渋滞にも巻き込まれずスムーズにここまで来ることができた。
霊安寺を出たのだ十時過ぎ、今はすでに午後一時過ぎ。
途中で、住職にもらったおにぎりは食べたものの、まともにはご飯を食べていないので、祐也が出てきたらこのままご飯でも食べに行くかと秀は思う。
あ、でも、祐也がもう昼食べ終わってたら、どうしようか。思案するものの、着いた連絡をしないと始まらないので、メールを送る。
客用駐車場は運よく開いていて、秀は駐車することができた。近場のコインパーキングという考えもあったが、探しに行かなくて済んだな、と思う。
車から降りて、祐也を待つ。
「秀、お疲れ様」
運転に対しての、お疲れ様だろうか、と思いながら、
「急に来て、ごめん」
秀はそう言っていた。
「何言ってるんだよ。俺は秀に会えたの嬉しいのに」
笑顔の祐也は、車を見る。
黒の軽自動車だ。
「従兄が車買い替えるからって、名義変更だけしてもらった。大学の入学祝いだって。いきなり新車買うより、中古車で慣れろって言われたから、ありがたくもらったけど」
従兄の聖は就職が決まって、軽自動車ではなく普通車に乗り換えた。
だが、まだ四年ほどしか乗っていなかったので、秀がもらったのだ。
大学に合格した時に、正に車に何が付いていたら便利だと思うかと問われ、特に深くは考えずにカーナビと答えた結果、聖から譲り受けた車にカーナビが搭載されていた。聖曰く、カーナビは正からの大学入学祝いらしい。
「良いなあ車」
祐也は車を覗き込んでいる。
「免許は持ってるのか?」
秀からの問いかけに、祐也は頷きで答えた。
だが、さすがに親元を離れたから、車まで買ってもらう訳にはいかなかった。仕送りだけでも充分過ぎるほどもらっているのだ。いくら便利だろうからと、車まで買ってほしいなんてことは言えない。就職して、自分で稼いだ金で買うべきだろう。そう祐也は思っている。
「車、運転したかったらして良いぞ。誰でも大丈夫な保険入ってるから」
「マジか」
たしか、任意保険で誰でも大丈夫となると、高くつくのではなかったかと、祐也は思う。
秀って金持ちの家の子?と思いつつ、車から視線を外して秀を見る。
姿勢が良いのは、そういう家系だからだろうか。しっかりと伸びた背筋、だらけている様子は一切うかがえない。隙ひとつないとはこのことを言うのだろうか、と祐也は秀を観察してしまった。
「何でじろじろ見てるんだ。祐也は昼もう食べたか?」
視線を外した秀の顔は、若干赤くなっているようにも見える。
しゃんと立っている姿はやっぱり綺麗。でもそんな仕草はやっぱり可愛い。
そう思う祐也は、このままやっぱり秀を家に招き入れようと思う。
秀がここへ来るまでに、考えていたのだ。
車を運転してるということは、昼を食べていない可能性が高い。ならば、秀を家へと連れ込むチャンスなのでは、と。
響きは悪いが、連れ込む、だ。祐也の心情が。
「実は、昼ご飯用意して待ってた。車運転してるってことは、食べてないんだろうなって思って」
だから、俺の部屋に来ない?と祐也は秀を誘う。
こんなチャンス逃したら、秀を家になかなか連れてこれないかもしれないではないか。
ちゃんと掃除したし、ご飯の味はまぁ、食べれるだろう。大丈夫だ。
祐也を、秀が驚いたように見ている。
「部屋、入って良いのか?」
と。
祐也としては、是非とも入ってください。であるのだが、祐也の心内を知らない秀は、戸惑っているのだろう。
「うん。ご飯の味は、ちゃんと食べれるものだから、安心して」
別の意味では安心できないんだけど。とは心の中だけに止める祐也。
目論見は、秀に俺をしっかり意識させよう。である。
「話し、したいことあったから、祐也の部屋に入って良いなら、俺はその方がありがたい」
外で大々的に話せる内容では、決してないので。秀はそう答えた。
話し、なんだろ。でも、俺の部屋に入ってってことは、人には聞かれたくない話しかな。
どんな話しだろうが、どんと来い、だ。全部ちゃんと聞く。
これまできっと秀は、誰かに自分の気持ちを話そうとかしてこなかっただろうから、ゆっくりでもなんでも、秀の話しは全部聞いて受け止めて。会話をしていきたい。そう祐也は思った。
「うん。じゃあ、こっち。二階の角部屋なんだ」
そう言って祐也は秀を家へと案内して行った。
すこし広めの1DK。
大きめの机と、ベッドが部屋を占領してるけど。
机の上は、ご飯を食べる為に片付けて、パソコンなんかは床に直置きだ。使う時に机に上げれば良いのだから、問題はない。
キッチンは、部屋に入るまでの廊下にある。反対側には洗面台やトイレとお風呂。あとは洗濯機。部屋の中に洗濯機置けれるって良いよねと祐也は思う。
「意外と広い」
部屋に通された秀が、ポツリと呟くのが聞こえた。
「でしょ。ワンルームも下見したけど、手狭感が半端なくてさ。こっち見たら、もうここが良いって即決しちゃったんだよね」
キッチンで、作っておいた料理を温めながら、祐也は答えた。
ユニットバスとか嫌いだし、ここはトイレとお風呂が離れているのも即決に繋がった。
「ねね、秀。こうやって、誰かの家に来るのも、ハジメテ?」
お皿を運びながら、祐也は問いかける。
秀は渋面になった。
ありゃ、面白くないって顔。でもさ、俺秀のハジメテ全部欲しいんだよねー。
「身内を換算しないなら、祐也が初めてだ。もう、色々全部初めてだよ」
秀がちょっと投げやりになってる。
可愛いんですけど。
っていうか、色々全部初めてって、なんかもう嬉しすぎて小躍りしそう。やったら変人だからやらないけど。
あー、昨日なんとか買い物行けて良かった。米だけの食卓になるとこだったよ。祐也は少し関係ないことを考えて、落ち着こうとする。
「こうやって、誰かの御飯食べるのも、身内を換算しなけりゃ初めてだよ」
秀の言葉は適格に、祐也の心臓を射抜いた。
俺やっぱり忍耐力試されてる?!部屋に二人きりとか、俺ヤバい?!
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