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秀の事情と祐也の事情
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二人はまた、裏庭に来ていた。いつ来ても、人がいない。
二人にとっては、静かで良いのだが。木が多く植えてある分、日差しは少ない。春の今の時期では、まだ少しだけ肌寒く感じる。だから、人が来ないのだろうか。夏になれば、良い具合の日陰になり、丁度良いのかもしれない。
「あんな簡単に、バレるなんて、思ってなかった」
ベンチに腰かけて、秀がポツリと呟いた。
敏行や、真に知られていたことが、かなり恥ずかしい様子の秀。
「本当にねー」
対する祐也は、のんきに答えている。
特にバレようが、どうだろうが気にしていないのだろう。
「祐也のせいだろ」
そんな祐也に、秀がムスッとしたまま声をかける。
「え、俺だけのせいじゃないでしょ。秀が、俺以外が近付くの嫌がるのも、バレた理由だよ」
祐也のせいだけに秀はしたけれど。そもそも秀の人間嫌いというか、単に距離をつかめなかっただけなのだろうが、その態度も起因している、と祐也は言う。
秀はそこら辺は心当たりがあったのか、祐也にだけ責任を押し付けられなくなる。
「ところでさ、秀の仕事って、いつくらいに終わるとかあるの?ああいうのって、終わりなく仕事があるの?」
祐也は、違う話しに切り替えることにしたらしい。
終わりなくあるかと問われたら、終わりなんてものはないのだが。
「今かかえてる分はほとんど終わってる。それがどうかしたのか?」
情報網に引っかかって来なければ、秀はあまり動く気はない。依頼が来たらまた別なのだが。
秀は、今のところ情報網に引っかかっていた分は、終わりが見えてきている。
敏行のあの一件から、あの周辺の浄化を行ったおかげか、邪気の噴出はあまりなくなっていた。あの寺が原因なのでは、と今では秀は思っている。
「終わりがあるなら、もっと秀といられるなって思って。という訳で、家にお泊りに来ませんか?」
祐也は茶化すように言う。
そういう言い方でもしなければ、自分の煩悩が、表に出てしまうからだ。
「お泊りって……」
秀は少し考える。
週末とかなら、多分できはしそうだが……と。
「やらしーこと考えてるだけじゃないよ。そこもあることは、否定できないけど」
「おまっ……」
秀は、考えてはいなかったことだった。
でも祐也に言われて、意識してしまう。言葉を途切れさせ、真っ赤な顔を見せる秀に、祐也は笑みを浮かべた。
「まぁまぁ、ふつーに健康男子なので、可愛い秀を押し倒したいって、願望はあるんだよ。押さえてるけど。でも、ま、お泊りにってのは、秀はそういうこともハジメテだろうからってだけだよ。そんないきなり押し倒したりしないから、さ」
多分。
祐也は心の中で付け足しながら、秀の表情の変化を見ようとする。
「俺だって、普通に男なんだが」
秀からの返答は、それだけだった。
霊安寺の住職に言われて、考えたことはあったけれど。秀の少ない知識では、そんなことは全く考えてもわからないことで、考えなくなってしまったのだ。
「んー、なんか秀ってそういうこと、無縁そう。一人でしたりする?」
「おいっ」
際どい質問に、秀がアタフタする。
可愛いなぁ、もう。本当押し倒したい。祐也の欲望は歯止めがない。もう、秀に対しては全てが欲しいのだ。だから、歯止めなんてなくなった。
男の体の構造上、溜まったものは出さなければならない。だから、無縁そうに見えるだけで、そういうことを一切していないわけではないのだろう。
わかってはいるが。ストイックともまた何か違う気がする。なんていうか、純潔?あー、うん。そっちの方がしっくりくるのかな。祐也は秀を見ながら考える。
「誰かにされたことなんて、無いよねぇ」
「有るわけないだろ」
ボンヤリ考えながら言った祐也の一言は、秀に間髪入れずに返された。
有ったら有ったで、ソイツを殺したくなるので、無いのは良いのだ。でも、多分秀は、そういうことを誰かにされることなんて、想像もしていないに違いない。祐也はそう思う。
「俺がそういうことを秀にシタイって、秀は想像できる?」
だから、聞いてみる。もしくは、する側でも別に良いんだけど。とか思いながら。
ううーん。秀に無理なことはさせたくないけど、こればっかりはねぇ。一度想像してしまうと、想像力というか、妄想力だけでは物足りなくなるのだ。
秀の全てを、見たい。
そんなことを言ったら、秀は嫌がるだろうか。
「できない」
真っ赤にはなっていたけれど、案外ハッキリと返事をくれた。
やっぱり、ゆっくり行くしかないだろうなぁ。前に秀を泣かせてしまった事が、祐也の頭を過る。
「でも、祐也に触られるのは嫌じゃない。前は、怖いって思ったけど」
こらこらこらこら。そんな可愛いこと言わない。俺もうここで秀押し倒しそう。
制御不能になりかけて、慌てて止める祐也。
秀ってば、わかってないからなんだろうけど。反応が可愛いし、言ってること可愛いって。
それって、俺になら何されても良いって言ってるようなもんなんだけど。ヤバいって。何、もう、本当可愛い過ぎるんだけど。
「ね、今秀すっごい可愛いこと言ったの気付いてる?」
祐也は何とか押し止めて、秀に質問する。
いや、わかってないんだろうけど。わかってなくて、言っちゃってるんだろうけど。
秀はわからないと言うように、首を傾げている。
「わからない」
と口にも出した。
あー、そういうとこも、本当に可愛い。
「今解説すると、ここが外とか関係なく、秀を襲っちゃいそうだから、週末家に来てよ。金土と泊まりで」
もうこれは、襲うぞと言っているようなもんだけど。なんでも良い。とりあえず、お泊りだけは約束しなければ、と祐也は秀に言う。
「金曜も、土曜も?」
二日間も泊まって大丈夫なのか、という意味なのだろう秀。
「俺はもう、毎日でも秀と一緒にいたいから。できれば週末が空いてるなら、全部俺といて」
今までだって、一緒にいられないことを耐えてきたんだ。と祐也は思う。
今度の週末は、秀と一緒に過ごしたい。できれば、その先の週末もずっと。そういう意味で言ったが、はたして伝わったか。
秀は少し考えている。
「祐也と一緒にいたいってのは、俺もあるけど……、依頼が入らなかったら大丈夫かな」
祐也の襲うぞ発言は、見事にわからなかったようだが、一緒にいたいという思いは、伝わったらしい秀。
一緒にいたいとか思ってくれてるとか、もう俺本当どうしよう。
ここは外、ここは外。
外でなんか何かしたら、きっと秀は嫌がる。しかもここ学校。
一緒に、二人だけでいられるこの裏庭に、来るのも嫌がられるようになったら、俺は耐えられない。
依頼が入るとは、秀の事情だろう。そこはやはり、しっかりと理解しなければ。
俺の事情なんて、押し付けたら駄目だ。
祐也は心で葛藤しながらも、しっかりとそこは受け止める。
「うん。依頼とかやらなきゃいけないことが有る時以外は、一緒にいよう」
そう言って笑った祐也に、やっと秀の笑みがもれた。
「金曜は、車で来る」
多分、着替えとか持ってくる為だろう。
今のところは、依頼がないから、金曜から来るのは大丈夫。秀の少ない言葉から、そういうことだと祐也は理解した。
「はぁ、早く週末来ないかなぁ。秀といれない週末は、さっさと過ぎろ、とか思ってたけどさ」
祐也はボヤくように言った。
「そういえば、祐也はバイトとかしないのか?」
始めの頃、空いた時間にバイトするのも云々と、祐也は言っていた。
秀は家の手伝いという名の、バイトのようなものをしている。もう昔からやっているから、生活の一部だし、それ以外にバイトをする気はないが。
「あー、なんか俺の親、子どもに甘いらしくてさ。仕送りだけで生活できるから。学校とか慣れたら、バイト考えるかもしんないけど。でも、せっかくの秀といられる時間が無くなるのも、嫌なんだよね」
祐也は答えながら、考えるそぶりを見せる。
バイトで週末つぶれて、秀といられなくなるくらいなら、今のままの方が絶対に良い。そう祐也は思うからだ。
「そうなのか」
特に気にしていない秀の返答。
祐也が生活に困ってないのなら、何も言うことはない、という考えだ。
そもそも、他人に干渉することが、秀にはない。
なので、祐也が良いなら、何も言わない。
「週末が楽しみ」
本当に楽しそうに祐也は声を発した。
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